経団連くりっぷ No.37 (1996年 7月25日)

第44回北海道経済懇談会/7月3日

新しい国土づくりは地域が考え、地域が実行する


「新世紀への挑戦─自立と創造」をテーマに、経団連・北海道経済連合会(道経連)共催の標記懇談会が、札幌にて開催された。
懇談の冒頭、北海道側を代表して戸田会長が「中央が考え地方が受け取る、という姿勢を反省し、地域自らが考え、実行していく姿勢が重要だ」と発言し、また来賓の堀北海道知事が「創造性あふれる北海道を」と訴えた。続いて、地元経済人が北海道で取り組んでいるプロジェクト等について紹介、その推進に向けた課題の克服について提言を行なった。
これに対し、経団連側は、豊田会長が「魅力ある日本」の創造への協力を求めるとともに、樋口、熊谷、古川各副会長が、経団連の活動等を紹介した。

  1. 北海道側発言
    1. 地域の自立が必要〔開会挨拶〕
      ─戸田一夫道経連会長(北海道電力会長)
    2. 戸田会長

      日本経済の構造改革の柱の1つとして、多極分散型の国土開発が求められる一方、今後の国家財政の逼迫状況を考え、北海道としても公共事業に依存しない自立型の産業構造を構築する必要がある。地域自らが考え、実行していく姿勢が必要だ。
      このような観点から道経連では、(1)第7次空港整備計画における道内空港の整備促進、(2)北海道新幹線の早期着工、(3)首都機能移転候補地への立候補(新千歳空港周辺地域)、(4)産学官の協力による「産業クラスター」の創造、(5)ITER(国際熱核融合実験炉)の苫小牧東部地区への誘致、を最重点テーマとして活動している。

    3. 創造性あふれる北海道づくり
      ─堀 達也北海道知事
    4. 現在、21世紀にふさわしい創造性あふれる北海道をつくるため、新しい総合計画を策定している。この計画では北海道の担うべき役割として、(1)さまざまなライフスタイルが実現できる場、(2)北方圏地域や東アジア地域などとの連携の場、(3)安全で良質な食料などの安定供給の場、(4)創造性あふれる産業展開の場の4つを掲げている。
      北海道がわが国の産業フロンティアとして21世紀に向け内発的発展を遂げるためには、新千歳空港、北海道新幹線や高規格幹線道路などの基盤整備、苫小牧東部地域などの立地環境の整備が必要である。

    5. 新産業の育成と産業構造の高度化
      ─庄村 裕道経連副会長(玉造社長)
    6. 第2次産業比率が12%と極端に低い北海道の経済構造を改革するため(全国平均は24%)、産学官が一体となって産業振興を図る「産業クラスター」の創造に努めている。本年2月発足の「北海道産業クラスター創造研究会」で戦略的な地域産業策を立案し、国や北海道の政策に反映させたい。
      今後、産・学の連携を強化する際、研究開発の資金、研究者、研究情報の不足と、研究目的・期間等に関する産学間の認識の相違の克服が課題となる。「地域共同センター」に、産学間の媒介・調整を行なう機能をもたせたい。

    7. 極東および北方圏地域との経済交流
      ─樫原泰明道経連副会長(伊藤組会長)
    8. 日本全体の対ロシア貿易が減少する中、北海道・ロシア間の貿易は拡大基調にある。サハリン大陸棚の石油・天然ガス資源開発プロジェクトが生産物分与契約の発効により本格的に始動したが、北海道は地理的条件を活かし、このプロジェクトの後方支援基地となり得る。
      また北海道は、北米、北欧、アジア北方との交流強化を目指す「北方圏構想」を官民一体で長年推進してきた。さらに最近は、成長著しい東アジア諸国との関係強化に取り組んでおり、道庁では、この地域への連絡事務所の設置を検討している。

    9. ほくとう新国土軸と北海道の役割
      ─中田一男道経連常任理事(苫小牧東部開発社長)
    10. 20世紀初頭、北海道の人口は50万人弱、全国47道府県中44位であったが、今や 565万人、全国6位となった。この間北海道は日本経済のフロンティアとして、資源・エネルギー、農林水産物の供給基地の役割を担い、国全体の発展に寄与してきた。
      21世紀に向けて北海道は、東北とともに新しいフロンティアとして、多様性を尊重し、創造性を育み、生活の質を高め、自然環境と共生する「ほくとう新国土軸」を形成しようとしている。北海道には、国際化時代の日本を支える大きなポテンシャルがある。首都機能移転候補地としても理解を得たい。

    11. 北海道の活性化へのプロジェクト
      ─三上顯一郎道経連副会長(北海道空港相談役)
    12. 道民の悲願である北海道新幹線の実現は、新しい国土軸を形成する上で、必要不可欠なプロジェクトである。全線フル規格での早期実現に向けて協力を得たい。
      新千歳空港の国際化の促進も重要である。アジア向け旅客路線の開設、新たに米国の航空会社に認められた以遠権を活かした貨物定期便の開設などに努力したい。
      ITERは世界的な科学技術開発を先導する役割を担う。わが国に誘致することはこの分野での国際貢献を促進することになる。地域の国際化、技術の高度化などの波及効果も期待できる。ぜひ苫小牧東部開発地域へ誘致したい。

  2. 経団連側発言
  3. 樋口副会長が「規制の撤廃・緩和、法人税率の引き下げなど行財政改革の断行を」と訴えた。また熊谷副会長は「多角的自由貿易体制の拡大、域内外の連携強化、産業の高度化でアジアは世界の繁栄に貢献せよ」と求めた。さらに全総計画に関する経団連の提言案を紹介した古川副会長は「国土づくりは地域が主役」と述べた。最後に豊田会長が、「魅力ある日本づくりにつながる北海道の挑戦を歓迎したい」と締めくくった。


くりっぷ No.37 目次日本語のホームページ