経団連くりっぷ No.37 (1996年 7月25日)

シンポジウム「規制緩和の経済効果について」/7月2日

規制緩和措置を積極的に活用し、ビジネスフロンティアの拡大を


活力ある経済社会を実現するには、政府が規制緩和措置を着実に実行することに加え、民間がこれを積極的に活用していくことが求められる。そこで経団連と経済広報センターでは、共催で標記のシンポジウムを開催し、行政改革委員会規制緩和小委員会の宮内座長から、今後の規制緩和の進め方について説明を聞くとともに、主要経済省庁から規制緩和により可能となるビジネスチャンスや市場規模等について説明を聞き、意見交換した。

  1. 今井副会長開会挨拶
  2. 規制の撤廃・緩和は、民間によるその活用があって初めて成果が挙がる。このシンポジウムが、官民相協力した新たな試みとして、民間による規制緩和措置の活用のきっかけとなることを期待する。

  3. 宮内義彦規制緩和小委員会座長挨拶
  4. 『規制緩和推進計画』の改定は来年3月が最後となる。規制緩和小委員会では、今年度は、農業、運輸、金融、医療・福祉、教育の5分野を重点的に検討することにしており、7月25日には論点公開を行なう予定である。
    市場原理に基づく経済を実現するには、規制緩和に加え、官業のあり方や地方自治体の独自規制、商慣行等の見直しも不可欠である。

  5. 豊田会長挨拶
  6. 行政改革委員会として、総理大臣に、(1)規制緩和の経済効果の公表、(2)『計画』期間終了後の規制緩和の推進体制の検討開始を提言いただきたい。

  7. 規制緩和の経済効果について
    1. 経済企画庁(土志田調整局長)
      1. 「構造改革のための経済社会計画」(95年12月閣議決定)によれば、96年度〜2000年度に物流、エネルギー、流通等の主要10分野における規制緩和等によって一定の生産性向上、コスト削減等が達成された場合、実質成長率は年率3%まで上昇し、失業率は2.75%に抑制されるのに対し、構造改革が進展しない場合、実質成長率は同 1.7%の上昇に止まり、失業率は3.75%に達するとの結論を得ている。

    2. 運輸省(小幡運輸政策局次長)
      1. トラック事業では、地域毎の需給調整の廃止、参入時の最低車両台数基準の引下げ等の結果、参入事業者数は年間約 800件から、92年度には約1,500件までに増加した。
      2. 国内航空は、ダブル・トリプルトラック化基準の緩和により、87%の利用者が航空会社を選択できるようになると見込まれる(現在75%)。また、運賃・料金規制の緩和により、割引率50%の商品も現れている。
      3. 車検においては、前整備・後検査の義務づけの廃止、定期点検項目の簡素化を実施したこと等により、95年下期には、ユーザー車検が前年同期比約8割増の57万件となり、車検時の点検・整備費用も平均13%低下した。

    3. 郵政省(團電気通信局電気通信事業部長)
      1. 電気通信事業では85年の制度改革後、新規参入が相次ぎ、国内長距離ならびに国際電話料金は85年の約3割にまで低下した。
      2. また、移動電話市場でも競争政策の推進により、過去5年間で新規加入料約87%、基本料金約43%、通話料約39%の大幅値下げが実現した。2000年には市場規模が現在の約3倍(8.5兆円)、雇用者数は約4倍(24万人弱)に拡大すると予想される。
      3. 衛星デジタル多チャンネル放送事業でもすでに30社以上の新規参入があり、サービスの多様化等が期待される。

    4. 建設省(那珂大臣官房審議官)
      1. 日本の住宅建設コストは米国の約2倍であるが、「構造改革のための経済社会計画」で、2000年度までにこれを3分の2程度まで引き下げることとしている。
      2. 本年3月の「緊急重点計画」で取り上げた建築基準の原則性能規定化、水道指定工事店制度の見直しなどにより、新分野や技術開発の誘発が期待される。
        また、建築基準の相互認証や輸入住宅の建設に従事する外国人技能者の入国手続の迅速化等により、輸入住宅や海外資材導入の円滑化等が期待される。

    5. 通商産業省(佐瀬通商産業研究所次長)
      1. 本年3月末の特石法廃止を先取りして、94年1月から96年6月までの間に、ガソリン価格が16円/rも低下するなど石油製品の価格低下が進んでおり、年間約1兆円が消費者・需要家に還元された計算になる。
      2. 昨年12月の電気・ガス料金制度改革による料金引下げ(電力10社計約 6,120億円、都市ガス大手3社計約50億円)は、卸売物価を0.15%程度引き下げる効果が見込まれる(経企庁試算)。
      3. また数次にわたる大店法の緩和の結果、出店調整に要する期間が91年度の平均34カ月から現在では8カ月に短縮され、出店届出件数も10年間で4倍強の 2,206件(95年度)に増加している。

    6. 大蔵省(河上大臣官房参事官)
      1. ビール製造免許に係る最低製造数量基準の引下げで、新規参入が増加(96年5月現在免許付与済34件等)した。また預金の期間制限廃止(95年10月)による預入期間5年以上の預金の残高は、96年3月末時点で7兆1,610億円に上っている。
      2. また普通社債による企業の資金調達は、95年度総額約6兆4,000億円(うち内国債約6兆円)で前年比5割をこえる増加となっている。こうしたことも、規制緩和措置の効果であろう。

  8. フロア発言(飯田セコム会長)
    1. 経済へのインパクトを考えれば、規制緩和は、徐々にではなく、一気に実現すべきである。
    2. 規制緩和の生活者に対するメリットが十分説明されていないため、世論の盛り上がりを欠いている。規制緩和推進の最大の応援団は世論であるという視点を忘れずに検討していただきたい。

  9. 総括コメント(鈴木規制緩和小委員会参与)
  10. 本日のシンポジウムでは、各省の取り組みの温度差が示された。各省には引き続き規制緩和の推進に尽力頂くとともに、国民の理解促進に向けて、規制緩和の効果の評価手法を研究願いたい。


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