経団連くりっぷ No.37 (1996年 7月25日)

中南米地域統合研究会(座長 高野尚彦氏)/7月9日

中南米地域統合の動きと研究会の発足


中南米諸国では、近年、メルコスール、アンデス共同市場をはじめとする各種の地域統合が急速な展開を見せ、域内諸国の経済に多大な影響をおよぼしつつある。わが国経済界としても、国際的な事業展開を進めていく上で中南米関係の再構築は主要な課題であり、このため中南米地域委員会(委員長 高垣 佑氏)では、中南米の地域統合の動向を把握するとともに、同地域との経済交流活性化の方途を探るべく、中南米地域統合研究会を発足した。第1回会合は7月9日に開催、外務省中南米局の佐藤俊一局長、堀村審議官ならびに佐藤悟中南米第1課長を招き、地域主義等について説明を聞いた。以下はその概要である。

  1. 地域統合の流れ
  2. 地域統合の歴史は戦前にさかのぼる。米ソの冷戦の狭間で欧州の復権を目的とした欧州共同体やベトナムの脅威に対抗するため結成されたASEANに象徴されるように、冷戦が終焉するまでは地域統合発足の動機は多分に政治的色彩が強かった。冷戦後、次第に政治的配慮が小さくなり、経済面に重点が置かれるようになった。92年にクリントン大統領が太平洋共同体構想を打ち出した頃から、至る所で地域主義および地域間の協力推進の動きが加速化し始め、今後の地域統合の動向を見通すことが難しくなってきている。

  3. わが国の地域統合に対する考え方
  4. 地域統合についてわが国としてまとまった方向がでているわけではないが、現時点の到達点は以下の3点にまとめられる。

    1. 地域統合の動きはグローバルな場であるGATT/WTOのルールと両立する形(域外諸国に対して開かれた形)で進められるべきである。
    2. 中南米との関係では、政府はメルコスールやリオ・グループなど主要なサブリージョンとの間で、年に1回程度、定期的に閣僚クラス、高級事務レベル間の会合を開催し、対話を行なう予定であり、経団連にも協力をお願いしたい。
    3. 92年頃、EU諸国に対して、日本から積極的に投資を行なったが、このことがEUのGATT/WTO体制との両立に極めて効果的であった。この点を踏まえ、中南米の各サブリージョンに対して日本のプレゼンスを高めるという意味でも、ぜひ日本企業の積極的な投資を期待する。

  5. 橋本首相の中南米訪問について
  6. 8月下旬(8/20〜30)に橋本首相の中南米(メキシコ、チリ、ブラジル、ペルー)訪問が予定されている。わが国としては環境、エネルギー分野を中心に中南米諸国と協力の拡大を図りたいと考えるが、今般の訪日の機会にぜひ新時代におけるアジアと中南米、日本と中南米とのパートナーシップのあり方を模索したいと考える。


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