経団連くりっぷ No.37 (1996年 7月25日)

日本イラン経済委員会(委員長 相川賢太郎氏)/7月4日

中東・イランを取り巻く国際情勢
−日本イラン経済委員会総会を開催


日本イラン経済委員会は、1996年度定時総会を開催し、1995年度事業報告・収支決算および1996年度事業計画・収支予算を原案通り可決した。当日は審議に先立ち、通産省の長尾尚人中東アフリカ室長を招き、イランを取り巻く国際情勢、とくに米国における通商制裁法の行方を中心に話を聞いた。以下は長尾室長の説明概要である。

  1. イランを取り巻く国際情勢
  2. 現在イランに対して国際的に懸念されていることは、テロ支援疑惑、核開発疑惑、現行の枠組みを通じた中東和平に反対していることの3点である。これについては、リヨン・サミットの議長声明でも言及され、イランを名指しで批難している。
    しかし現実的な対応となると、日欧と米国では、大きく異なる。日欧は、現ラフサンジャニ政権が現実的な政策を推進していることを高く評価しており、現政権を追いつめることは、却ってイラン国内の過激派の台頭につながるとして、対話の促進を重視している。一方米国は、対話では疑惑は晴らせないとして、イラン孤立化政策をとっている。
    具体的には、95年5月に米国企業の対イラン取り引きを禁止させ、日欧にも対イラン禁輸への同調を求めてきた。わが国では、とくに第2次円借款の供与を再検討するとともに米国企業が撤退した後にわが国企業がその穴を埋めないようにとの米国の要請に配慮してきた。しかし、孤立化政策が必ずしも有効だとは思わないこと、ラフサンジャニ政権が現実的な政策をとっていること、国際的なコンセンサスがないこと、イランがテロを支援しているとの証拠の提示が無いことなどから、米国に完全に同調しているわけではない。

  3. 米国の対イラン制裁と対日影響
  4. 米国は、国内的に、いわゆるダマト法案(上院)が昨年12月20日に対イラン・リビア制裁法として可決され、またギルマン法案(下院)が今年6月19日にダマト法案を強化する形で修正の上可決された。
    今後両院で調整の上、然るべき法案が策定され、秋までに大統領が署名するものと思われる。これらの動きに対して、米国ビジネス界からは実効を疑問視する声が上がっている。また域外適用の問題をはじめWTOとの整合性の問題を多く抱えているとともに、大統領の裁量の幅が広いこともあり、実際に法を適用することは難しいと見られている。
    これら米国の動きに対して、欧州は、当面静観するつもりであるが、日本政府としては、円借款、貿易保険ともに諸情勢を勘案しつつ慎重に対処していくつもりである。経済界には、石油資源開発事業でなくとも、対イラン関係を強化するにあたっては、慎重に対処することを希望する。


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