橋本行革ビジョンについて聞く

自由民主党は、行政改革推進のグランドデザインとして、６月18日、橋本行革ビジョン『「日本を元気にする行政システム」の確立－超高齢社会と大競争時代に備えて』を公表した。そこで、行政改革推進委員会では、このビジョンを取りまとめた自由民主党行政改革推進本部の柳澤伯夫事務局長から、取りまとめの趣旨と概要等について説明を聞くとともに意見交換を行なった。当日は併せて本年度に入ってからの行政改革推進委員会関係の活動について事務局から報告があり、了承された。

今井委員長

柳澤事務局長説明要旨

ビジョン策定の背景

基本認識

大きい政府を指向しがちな「超高齢社会」と、自己責任が求められる「大競争時代」は矛盾するのではないかとの指摘もあるが、時代の両側面に対処するには、元気、活力が必要であるというのが基本認識である。
従来の生産者・供給者優先、行政主導型の行政運営に対する国民の信頼は揺らいでいる。消費者に対し十分配慮するとともに、民間活力を発揮させることが求められる。その際必要な行政の手法は明確なルールの制定と、透明な手続である。

ビジョンにおける改革の方向

第１は国の役割のゼロベースからの見直しとスリム化である。
財政再建については、赤字国債の脱却ばかりでなく、財政赤字のマクロ的なあり方についてもより合理的な基準が必要である。特に総裁は、国民負担率の上昇を懸念しており、目指すべき基準として45％を提示している。
このため、今後の財政運営では、シーリングを含め予算編成のあり方や、地方財政の見直しが必要であり、財政再建計画の策定とこれに沿った作業が求められる。
また、中央省庁の再編は、首都機能移転を念頭に取り組む必要がある。行政は、政策立案部門と制度執行部門の両輪からなるが、このうち政策立案部門を分離して移転することにより、現状の打開を図らねばならない。
しかし、最優先で取り組むべき課題は、規制緩和や地方分権、中央省庁再編等の前提となる公務員制度改革である。紆余曲折もあったが、ここでは踏み込んで一括採用を含め人事管理の一元化等を提示している。
国鉄改革では幹部の採用停止が功を奏したとの経験を紹介したところ、梶山官房長官は、国家公務員Ⅰ種職員採用者数の３割削減構想を打ち出された。
第２は活力と創造力を生み出す行政である。ただし、規制緩和推進にあたっては、同時に適切な弱者保護対策も必要である。
高齢化に際しては、年金、医療、介護が有機的に連携した制度の整備が求められる。公的介護保険などが大きな政府に繋がることのないよう、慎重な検討が必要である。
第３は透明で責任の明確な行政であり、行政情報の公開は不可欠である。
特殊法人については、世論や国会が監視し、行政の執行部門として不要ならば廃止すべきである。財投も、財政活動の形態として不適当なのか、また特殊法人等の資金調達の方式として適切かとの観点を中心に、議論すべきである。
地方分権については、曖昧になっている行政の責任の所在を明確にするという観点から、推進の方針を打ち出している。
第４は高コスト構造是正の行政であり、行政手続書類・行政調査の見直しや、公益法人の問題を取り上げている。

意見交換

豊田経団連会長：

要は実行である。規制緩和をはじめ行政改革の推進につき政治のリーダーシップを期待する。

飯田セコム会長：

ビジョンで示された課題の具体化が重要である。転換期においては、ある程度ハードランディングも止むを得ないのではないか。
公務員制度の改革をきっかけに行革を進めるとのことだが、新規採用の抑制に加え、不用な官庁の整理にも政治のリーダーシップで取り組んでいただきたい。
地方にはほとんど議会が開かれない自治体もある。議員のボランティア化など地方行革への取り組みも必要である。

松田JR東日本社長：

国鉄改革の経験から言えば、形式から入るドラスティックな改革も有効である。国家公務員は３分の１に減らしても十分対応できる。目標を決め、実現を図ることが大事である。
特殊法人という形態は官民双方の悪い部分を足したものである。民間でできるものはすべて民間に任せ、官が行なう場合はすべて国営とすべきである。
経済界も行革や規制緩和に消極的な官庁の人材は10年間受け入れない旨を決議するなどしてはどうか。

柳澤事務局長：

規制緩和や地方分権はもちろん推進するが、それだけでは真の行政改革はできない。根底にある公務員制度を改革してこそ行政改革の見通しが立つと考える。
地方自治体のあり方について、受け皿論は重要である。しかし、首長や議員は財政的に困らない限り、現状維持を求める傾向が強い。合併を推進するには、市中消化を前提として、地方債の発行を自由化し、格付けを通じて自らの改革を促すことも考えられる。

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