経団連くりっぷ No.38 (1996年 8月 8日)

日本トルコ経済委員会(委員長 関 和平氏)/7月23日

不安定な連立政権下の経済改革


日本トルコ経済委員会は、1996年度定時総会を開催し、1995年度事業報告・収支決算および1996年度事業計画・収支予算を原案通り可決した。当日は審議に先立ち、外務省中近東アフリカ局の鈴木中近東第1課長を招き、トルコの政治・経済情勢を中心に説明を聞いた。
以下は鈴木課長の説明概要である。

関 委員長

  1. 地政学的に重要なトルコ
  2. トルコは、伝統的に中東地域の重要な安定勢力であり、現在においても何ら変わらない。国民の多数がイスラム教徒でありながら、西側諸国と良好な関係を維持していることは高く評価されるべきである。また最近では、ロシアや中央アジアの国々、さらには環黒海諸国との関係も強化している。日本政府としても、改めてトルコのこの地域における役割の重要性を見直し、関係を強化していく所存である。ちなみに、先般、池田外相が、外相として6年振りに訪土したところである。

  3. 安定しないマクロ経済
  4. トルコ経済は、政情と同様、安定感に欠ける。貿易面でも財政面でも赤字体質である。しかし潜在成長力は高い。一般に産業はハイテク分野こそ少ないものの、周辺国と比較して十分に育っており、底力はある。EUとの関税同盟をテコに今後の成長が期待されている。

  5. 揺れ動く連立政権
  6. 昨年11月の総選挙の後、第2、第3党である祖国党と正道党の連立時代を経て、6月に第1党の福祉党と正道党の連立内閣となった。当初は、福祉党がイスラム政党のため、原理主義の台頭を懸念する声もあったが、実際、宗教的にはモデレートな政党である。
    現内閣の中に原理主義的な閣僚はいないし、対外関係および経済関係の主要閣僚は、すべて正道党から出ている。これがEUはじめ対外的な安心感を呼んでもいる。
    連立政権の当面の課題は、年末に向けての予算編成の作業である。宗教に裏打ちされたバラ撒き傾向の強い福祉党と、従来路線の継続を求める正道党がどのように折り合っていくのか、注目していきたい。
    また対外的にはシリア、ギリシャ、イランなど、周辺国との関係改善も大きな課題となっている。


くりっぷ No.38 目次日本語のホームページ