経団連くりっぷ No.38 (1996年 8月 8日)

北アフリカ委員会・日本アルジェリア経済委員会(委員長 室伏 稔氏)/7月16日

アルジェリア経済の発展を妨げるものはなにか


地域委員会の再編に伴い解散する北アフリカ委員会ならびに新設される日本アルジェリア経済委員会の総会を7月16日に開催し、北アフリカ委員会の1995年度事業報告、収支決算、および日本アルジェリア経済委員会の規約、役員人事、1996年度事業計画・収支予算を原案通り可決した。当日は、総会議案の審議に先立ち、帰任直後の荒駐アルジェリア大使を招き、アルジェリアの国内情勢を中心に話を聞いた。以下は荒大使の説明概要である。

  1. アルジェリア紛争の構図
  2. アルジェリアの内紛と混乱の原因は、独立以来続いた事実上の軍政が民意から次第に乖離したこと、社会主義的な経済運営が破綻したこと、伝統的なイスラム社会と現代化の理念の間にミスマッチがあることの3点に集約される。
    これらが結果として近代化の挫折を招き、新たなアルジェリア社会の構築を目指す上で諸勢力の政策、方向性の違いにつながっている。軍政に反発する反政府イスラム原理主義との間の力のぶつかりあいもその一環であり、いわば国内的な権力抗争であり、西欧対イスラムの構図ではない。

  3. 政治情勢
  4. 95年11月に行なわれた大統領選挙は、民主化を図る上でよい結果をもたらしたと思う。今後予定される民主化のプロセスは、本年中の憲法改正、97年前半の総選挙、そして97年後半の地方選挙である。これらに向けての課題は、ゼル・アル大統領が、反政府勢力とどこまで対話を強化できるかであるが、イスラム強硬派との対話が進む可能性については懐疑的な見方をするむきが多い。離任直前の7月3日にゼル・アル大統領とお会いした際、大統領は必ず民主化を進めることと、もはやテロの心配はいらないことを強調していた。テロの被害者数も減少傾向にある。

  5. 経済情勢
  6. 幸い2年続きで天候が良好で、農作物は豊作だと聞いている。物価もうまく抑え込んでおり、96年も4%成長は期待できる。しかしいまだに原油依存の経済であることには変わりがなく、原油価格の変動に経済が大きな影響を受けている。一方、対外債務のリスケジュールの効果は大きく、95年には25億ドルもの貴重な外貨を投じて食料を輸入し、飢餓を防ぐことができた。これからの課題は、経営の行き詰まった国営企業の処理である。失業率は未だに高いが、やや改善の兆しが見えつつある。

  7. 日本アルジェリア関係
  8. 日本からの経済協力などに対するアルジェリアの期待は高い。わが国としても、将来の石油の安定供給国として、アルジェリアは重要な国であり、大切にしていきたい。今後、テロが沈静化すれば、かつてのような協力関係を模索できるものと考える。


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