経団連くりっぷ No.38 (1996年 8月 8日)

日本ロシア経済委員会(委員長 河毛二郎氏)/7月17日

エリツィン再選と今後の日ロ関係


日本ロシア経済委員会では、1996年度定時総会を開催し、95年度の事業報告・収支決算および96年度の事業計画・収支予算、規約改正、役員改選などの議案を審議し、原案通り可決承認した。
当日は審議に先立ち、篠田研次・外務省欧亜ロシア課長より、ロシア大統領選挙後のロシア情勢と今後の日ロ関係について説明を聞いた。
以下はその概要である。

河毛委員長

  1. ロシア大統領選挙について
  2. 7月3日に決戦投票が行なわれた結果、現職のエリツィン大統領が予想通り、大差で再選を果たした。今回の選挙は、ロシアの民主主義が定着したことを示すとともに、改革の継続か共産政権の復活か、という今後の体制を選択する重要な選挙でもあった。結局、ロシア国民は過去への回帰を拒否した。今回の選挙においてエリツィン大統領が現職の強みを最大限に生かし、各種の公約を行なったほか、選挙日を変更するなど強引な手段を用いて高い投票率を達成したことも勝因のひとつであったと言える。また、有権者に存在する共産主義時代のイメージをうまく刺激し、今次選挙を「体制選択の選挙」として位置づけたことも功を奏した。

  3. 今後のエリツィン政権の課題
  4. 今後の課題としてはまず、エリツィン大統領の健康問題が挙げられよう。エリツィン政権がどういう顔ぶれになるのかも重要だが、今のところ、チェルノムイジン首相が組閣を任されており、エリツィン大統領の後継者になると見る向きも多い。また、政権内に取り込んだレベジ中将の扱いも注目される。一方、選挙で敗北したものの、40%もの支持率を獲得した共産党の影響力も無視できない。共産党は今後、議会における最大野党の地位を目指していくだろうが、若者の支持を得るためには、古い共産主義のイメージから脱皮を迫られよう。

  5. 今後の日ロ関係
  6. 日本の対ロ政策は基本的に大統領選挙によって変わることはない。ロシアの対日政策についてはしばらく様子を見ることが必要だが、大きな変化はないと思う。ただし、エリツィン大統領が2期目に入って立場が強くなり、思い切った外交政策を打ってくる可能性もある。橋本首相のモスクワ訪問を経て、外相レベルの会合や次官級の平和条約作業部会も予定されており、政府としては93年の東京宣言を2国間関係の基礎として、対ロ関係の正常化を図っていきたいと思っている。


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