経団連くりっぷ No.38 (1996年 8月 8日)

アジア・大洋州地域委員会企画部会(部会長 飯島 健氏)/7月26日

APECに経済界の意見を反映することが必要


さる7月15日と16日の両日、ニュージーランドにおいてAPEC貿易担当大臣会合が開かれ、12月に予定されるWTO閣僚会議への対応や、APECマニラ会議(11月)に向けた各メンバーの個別行動計画について協議が行なわれた。アジア・大洋州地域委員会企画部会では、通産省通商政策局の関APEC推進室長を招き、この会合の模様について話を聞くとともに懇談した。以下はその概要である。

  1. 出そろった各国・地域の行動計画
  2. 今年のAPECマニラ会議では、昨年の大阪会議で採択された行動指針を受け、各国・地域が自由化・円滑化の個別行動計画を提出する予定となっている。5月に開かれたAPEC高級事務レベル会議において、自由化・円滑化に関する18カ国・地域の個別行動計画案がすべて出そろった。これは大変勇気付けられることである。自由化・円滑化は経済界が大きな関心を持っている分野であると同時に、APECが民間の期待に応える大きな分野であるからだ。

  3. 貿易大臣会合の概要
  4. 今回の貿易大臣会合の目的は、12月に行なわれるWTO閣僚会議に向けて、APECがどのような貢献をできるかを議論するとともに、各メンバーの個別行動計画案を点検し、今後の改善の方向を模索することである。会合ではまず、ウルグアイラウンド合意の実施の重要性が強調され、その実施が難しい発展途上国を積極的に支援していくことが謳われた。また、すべてのAPECメンバーが行動計画案を提出し、その内容がウルグアイラウンド合意を超え、各メンバーがさらに改善の意欲を示したことを評価した。日本からは、民間の意見を行動計画に反映することの重要性を提起するとともに、各国からの要求を踏まえ、日本の行動計画案も改善していくことを表明した。

  5. フィリピン訪問について
  6. 貿易大臣会合終了後、塚原通産大臣はフィリピンを訪問し、ラモス大統領と2国間問題について懇談した。その際に大臣は、大統領が提唱するABF(APEC Business Forum)と、APECの民間諮問機関であるABACは競争関係になってはならず、同じレベルに位置づけるべきだと述べ、ラモス大統領もこれに賛同した。また、APECの開発協力は援助ではなく、平等のパートナーシップとしての協力を推進すべきだ、との考えで双方の意見が一致した。

  7. APECマニラ会議に向けて
  8. 今年のAPECマニラ会議では、各メンバーの行動計画の提出がプロセスの中心となるが、同時に開発協力にも重点が置かれよう。経済界の意見を積極的に行動計画に反映するとともに、投資のルール作りとリスクの軽減を推進していくことが、マニラ会議の重要なステップであると思う。


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