経団連くりっぷ No.38 (1996年 8月 8日)

情報通信委員会(委員長 藤井義弘氏)/7月24日

情報化推進のための環境整備を


情報通信委員会では、渡辺通産省機械情報産業局長を招き、「経済社会構造改革と情報化」について説明を聞くとともに、種々懇談した。同局長より「わが国の情報化は米国に比べ5〜7年遅れているが、経済社会の構造改革にとって情報化の推進は不可欠であり、そのための環境整備が急がれる」との説明があった。また、情報通信委員会では新たに「情報化部会」(部会長 磯山東京海上火災保険専務取締役)を設けるとともに、従来の通信政策部会と放送政策部会を「通信・放送政策部会」(部会長 三木新日本製鐵副社長)に統合した。
なお、委員会終了後、先般経団連が実施した「情報化推進のための制度見直しに関するアンケート調査結果(中間的整理)」を公表するとともに、インターネットにおいて、広く国民から意見を募集している

藤井委員長

  1. 渡辺局長説明要旨
    1. 情報化の意義
      1. 情報化は、新事業の創出、産業の高度化、国際競争力の強化を促し、雇用機会を拡大させるとともに、行政の効率を高める。
      2. しかし、研究、教育、行政等公的分野における情報化の遅れ、情報化に対する民間ユーザーの低い価値認識、情報化に向けた取り組みに支障をきたす諸制度の存在(書保存義務、紙による申告・申請等)などにより産業・公的分野における情報化投資は、米国よりも5〜7年遅れている。
      3. ただし、最近、パソコンやインターネット利用が活発化し、企業の情報化投資も伸びている。また、行政における情報化も、急速に進展しつつある。こうした動きが順調に育っていけば、21世紀初頭には、米国に相当キャッチアップすることができよう。

    2. 21世紀に向けた情報化推進
      1. 需要面
        これまでの産業政策は、供給側の振興が中心であったが、情報化するためには、何よりもネットワークの利用が活発になることが不可欠である。

        1. 公的分野の情報化
          政府では、高度情報通信社会推進本部に おいて、関係省庁が連携して、教育、研究、医療・福祉、行政などの公的分野における情報化を推進している。

        2. 産業分野の情報化
          通産省では、産業分野における情報化のため、企業・消費者ならびに企業間のEC(電子商取引)を総合的に推進する体制整備を図っている。通産省の行なうEC推進事 業の17のプロジェクトには350の企業、50万人の消費者が参加しており、その規模は米国よりもはるかに大きい。

      2. 供給面
        情報通信関係産業の発展の環境を整備する視点から、情報通信市場の規制緩和に取り組むとともに、独立ベンチャーの支援、創造的なソフトウェア技術開発への支援、マルチメディアソフト産業の振興、データベース産業の育成、先進的な電子情報技術開発の推進、人材育成などを行なう必要がある。

      3. 高度情報化推進のための環境整備
        産業分野および公的分野の情報化を推進するため、情報化を阻害している制度や取引慣行を改善しなければならない。米国では、税務関係書類の保存・申告の電子化が認められたことが企業の情報化の起爆剤となったと言われている。また、セキュリティー・プライバシーの確保、知的財産権制度の整備などに取り組む必要がある。

  2. 懇談
  3. 経団連側:
    経済のグローバル化に伴い、企業が国を選ぶ時代になってきたが、日本には法人税等の高コスト構造がある。また、米国の国防総省のように、情報化に対して政府の応援をお願いしたい。
    渡辺局長:
    日本の高コスト構造は、既存制度の規制緩和に加え、公的部門の情報化によって是正していきたい。情報化については国においても積極的に取り組むが、民間の横並び体質を改め、独自の技術開発を推進していただきたい。

    経団連側:
    雇用問題も重要だが、情報化により失業者が増えるはずである。
    渡辺局長:
    欧州、米国の例にもあるように情報通信産業の雇用の増加から、失業の増加を差引くと、トータルで雇用は増加する。

2000年に向けた政策の方向


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