経団連くりっぷ No.39 (1996年 9月12日)
財政制度委員会社会保障制度専門部会(専門部会長 高野盛久氏)/8月28日
高齢者介護のあり方について検討
今後の本格的な高齢社会を迎えるにあたり、財政構造改革、特に社会保障制度の再構築は重要かつ緊急の課題である。当専門部会では、国民負担率を抑制し、活力ある経済社会を維持するとの視点から、民間活力の最大限の活用、自助努力を基本とした社会保障制度のあり方を検討している。その一環として、8月28日に会合を開催し、厚生省から介護保険制度案の概要について説明を受け、その後、日経連の高梨環境社会部長から、厚生省案に対する評価と問題点について説明を聞き、懇談を行なった。以下は高梨部長の説明と懇談の概要である。
なお、当専門部会では、9月3日に全国市長会、ベネッセ・コーポレーション、5日にお茶の水女子大学袖井教授を招き、高齢者介護のあり方についてさらに検討を進めた。
- 日経連高梨環境社会部長説明
厚生省案については、評価できる点と問題点がある。
- 評価できる点
- 措置制度が廃止される。これにより、自由度、選択度が拡大する。
- 在宅サービスの供給面で、民活の方向が出されている。
- 高齢者にも保険料負担を求めている。
- 利用者負担に定率制(1割)が導入されている。
- 合議による要介護認定で、過剰給付を抑制できる。
- 医療と介護を分けることにより、社会的入院がなくなる。
- 問題点
- 事業主負担を法定義務化しようとしている。
- 施設サービスに民活の考え方がない。
- 介護保険により医療費がどの程度節減されるのか、詳細が示されていない。
- 老人保健制度の改革の道筋が示されていない。
- 事業主負担の法定化に反対
日経連は事業主負担に強く反対している。被用者の保険料の分担については、企業内の福利厚生の一部として労使協議で考えるべきである。
- 懇談(経団連側の主な発言)
- 介護保険制度の議論は、老人保健拠出金の見直し、医療、年金の抜本改革と一緒に考えるべきである。介護制度のあり方について結論を出すのは早すぎる。
- 介護保険制度案は、公費が給付費の5割も入っており、保険方式としてすっきり割り切れる制度になっていない。
- 企業の社会保障負担の水準については、租税と併せて見るべきである。企業の公的負担はすでに重い水準にあり、その上に、介護保険制度で事業主負担を求めるのは問題である。
- 被保険者を年齢により2つに分けたのは問題である。
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