経団連くりっぷ No.39 (1996年 9月12日)

中東・アフリカ地域委員会(共同委員長 黒澤 洋氏)/7月30日

中東和平の進展は中東経済の発展の鍵
─ページ世銀主任エコノミストとの懇談会を開催


中東・北アフリカ諸国には、鉱物資源には恵まれているものの、経済開発が遅れている国が多い。中東和平プロセスが進展する中にあって、この地域の経済開発は世界的な課題となっている。
こうした中で世界銀行では、冊子「未来を私達の手に−中近東・北アフリカにおける繁栄への模索(邦訳)#を刊行した。中東・アフリカ地域委員会では、同行のジョン・ページ主任エコノミストを招き懇談した。以下はページ氏の発言要旨である。

中東・北アフリカ地域(MENA)は、資源に恵まれた地域であるが、これまで国内の関心が経済開発よりも政治的な紛争に注がれたこと、石油を中心とした資源収入が特権階級の強化に使われてしまったことなどにより、経済開発が成功しなかった。

国の発展に必要とされる人材育成の遅れも産業振興の妨げになっている。

このように経済政策の失敗が同地域に社会不安をもたらした。その結果、失業率、とくに若年・高学歴層のそれは世界で最も高い水準にある。

しかし、MENAの将来は、必ずしも暗いとは限らない。これまでMENAの国々のリーダーの存在意義は、イスラエルとの関係のあり方に限られてきた。しかし中東和平が途についたことにより、状況は大きく変化している。今後の経済発展の処方箋として、世銀では、以下の4点を指摘した。

  1. 全国民に教育の機会を
  2. MENAの文盲率は世界で最も高い。学校数と義務教育年数を増やし、カリキュラムを改善し、教育機会を男女平等にすべきだ。

  3. 輸出型産業の育成を
  4. 安定的な経済成長には輸出指向型産業の育成が必要である。貿易障壁を廃し、戦略産業を優遇し、WTOとの整合性を図り、EUとの関係を強化すべきである。

  5. 民間に投資の機会を
  6. 民間部門の積極的な投資を促進する方向で、政策誘導すべきである。これを可能とするためには、官僚の再教育が必要である。

  7. 国営企業の民営化を
  8. 国は市場原理を尊重し、教育・福祉・防衛・安全保障等のサービスに傾注していく必要がある。とくに国際競争が厳しい分野の国営企業は、民営化を急ぐべきである。

さらなる相互理解の促進を─アフリカ開発に関するハイレベル・セミナーに協力

中東・アフリカ地域委員会では、8月26日から30日まで、日本政府が「アフリカ開発に関するハイレベル・セミナー」を開催したことを期に、28日、わが国経済界代表として同セミナー出席者との意見交換を行なった。同セミナーの参加者はアフリカ諸国の駐国連大使をはじめ80名、経団連からは笠原中東・アフリカ地域委員長はじめ13名が出席した。日本企業の投資の可能性、投資促進型ODA導入の可能性等について真剣な意見交換が行なわれた。なお30日夕刻の池田外相主催レセプションには、豊田会長も出席した。


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