経団連くりっぷ No.39 (1996年 9月12日)

今後の日米協力を考える部会(部会長 上原 隆 氏)/8月22日

日本市場のアクセス改善は日米両国の利益
─米国政府の見解を聞く


今後の日米協力を考える部会では、ブライアン・J・モーラー在日米国大使館経済担当参事官より日米通商問題の各イシューに関する米国政府の公式見解を聞いた。

  1. クリントン政権の成果
    1. クリントン大統領は、米国市場と同等の市場アクセスを諸外国にも求める立場で通商政策を運営してきた。
    2. 1993年に開始した日米包括経済協議はマクロ経済、分野別イシュー、構造問題を扱い、結果重視型のアプローチをとった。
    3. 包括協議の枠組みの下、20以上の合意を締結した。包括協議の成果、米国企業の努力、日本の消費者の意識変化などが要因となり、米国の対日輸出の増加(とりわけ合意成立分野)などが見られる。

  2. 自動車合意
    1. 合意の成果が顕著である。補修部品市場の規制緩和などにより、日本国内において米国部品が売上を伸ばしている。
    2. 米国企業は右ハンドルのモデルを投入するなど努力を払っている。しかし、ディーラーとのフランチャイズ契約が思ったように進まず不満が高まっている。
    3. 日系自動車メーカーの米国内での生産が強化されることを歓迎している。

  3. 半導体協定
    1. 米国は、相互依存の深化に寄与した日米半導体協定を存続すべきだと考えていた。
    2. いずれにせよ、民間同士が「世界半導体会議」、政府間が協議メカニズムの設置などを合意し、新体制が発足したことは喜ばしい。

  4. 保険
    1. クリントン政権は、大蔵省が発表した日米保険合意(94年)の実施計画が合意内容を損なうものであると懸念している。
    2. 目下の議論の中心は日米の生・損保分野の規制緩和といわゆる「第三分野」に対する日本企業の参入問題の関連性である。米国は、ます生・損保分野の規制緩和を実施することが合意の趣旨だと考える。
    3. 問題解決の進捗のために、継続的な討議が行なわれることを希望する。

  5. フィルム
    1. 米国は、6月13日、
      1. 1994年GATT違反(日本政府が輸入を阻害するために自由化対抗措置を講じている)、
      2. サービス一般協定違反(大店法がサービス供給者に対する障害、製品輸入に対する障害となっている)、
      3. 1960年GATT決定(制限的商慣習についての協議に関する決定)
      の3点に関し、WTOに基づく二国間協議の開始を要請した。
    2. 7月の二国間協議で解決に至らず、米国は、(1)フィルム市場、(2)大店法に関する2つのWTO紛争解決パネルの設置を要請している。


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