経団連くりっぷ No.39 (1996年 9月12日)

企業行動委員会(委員長 那須 翔氏、共同委員長 鈴木敏文氏)/8月28日

「企業行動憲章部会」の設置を決定


経団連では91年に「企業行動憲章」を発表し、企業行動の見直しや自己規律を呼びかけてきた。しかしその後の内外の環境変化や、最近の企業不祥事に鑑み、今般、同憲章を見直すこととし具体的検討を進めるため「企業行動憲章部会」(部会長:小野敏夫 日本電気専務取締役)を設置することとした。当日は、日本ヒューレット・パッカード社、日本電気より企業倫理への取り組みについて報告をきいた後、憲章見直しに向け検討すべき点につき意見交換した。

  1. 日本ヒューレット・パッカード社
    諏訪俊光常務取締役説明
  2. ヒューレット・パッカード(HP)社の企業倫理に関する基本的考えは「会社の価値観」「会社の目的」「日常の実践」の3部から成る「HPWay」に示されている。81年には、それらに基づき業務運営の基本方針やそれに関わるさまざまな法律を遵守するための規定を「業務上の行動指針」として発表した。行動指針は、供給者、会社、競争会社、顧客の4部から成り、各行動指針では、Q&A形式で従業員が守るべきルールをわかりやすく解説している。これらの指針は、入社時に加えて、年1回上司が直接の部下に説明することを義務づけており、実際に説明があったかどうかを監査役がチェックしている。

  3. 日本電気
    萬田和彦支配人説明
  4. NECでは、企業運営の哲学を企業理念として発表し、それに基づき「良き企業市民として活動する」など、6つの経営指針を設けている。個々の事業活動については、基準や規範をマニュアル化し、企業活動のほぼ全域をカバーする業務マニュアルとして集大成している。また、文章に書き表せない部分について各種の教育プログラムで補完している。その他、企業秘密とは何か等をわかりやすく解説した各種手引き書、営業行動の規範や、問題が起きた時の対応や反省をまとめた事例集なども配布している。これらについてはトップ・マネージメントが責任をもって従業員に周知徹底している。
    また、良き企業市民としての活動を支援すべく「環境憲章」を設け、環境と調和した企業活動に向け行動指針を示している。

  5. 自由懇談
    1. 日本では、不景気になると企業が寄付を控える傾向が見られる。欧米企業は、寄付などの社会貢献活動を、企業が社会で果たすべき役割の一つと捉え、業績に関わりなく実施する。企業行動憲章では、企業の社会貢献活動への考え方を改めて示すべき。

    2. 日本でも能力主義や年俸制を採用する企業が増えるに伴い、従業員の企業に対する忠誠心も変化している。戦後、日本企業は「従業員性善説」の下で経営してきたが現在これを見直す時期にきているのではないか。憲章ではこの点も検討する必要がある。


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