経団連くりっぷ No.40 (1996年 9月26日)

企業人政治フォーラム(会長 川勝堅二氏)/9月11日

新進党の経済構造改革を問う


企業人政治フォーラムは、シンポジウム「新進党の経済構造改革を問う」を開催した。当日は企業人約 200名が出席し、新進党からは、野田毅新進党政審会長・「明日の内閣」総合調整大臣らが出席し(下記参照)、野村総合研究所主任エコノミストの植草一秀氏の司会のもと、景気回復、財政再建、少子高齢化社会への対応などについて意見を交わした。席上、野田政審会長は「経済再建なくして財政再建なし」と述べ、経済構造改革の重要性を強調した。

〔パネリスト〕(順不同)
   新進党 政審会長・「明日の内閣」総合調整大臣  野田  毅氏
       広報・企画委員長(元総務庁長官)    鹿野 道彦氏
       「明日の内閣」経済・財政政策大臣    牛嶋  正氏
       「明日の内閣」行政改革副大臣      倉田 栄喜氏

〔司 会〕  野村総合研究所 主任エコノミスト    植草 一秀氏

  1. パネリスト発言要旨
  2. 各政党が政策を掲げて競うべき:植草氏

    わが国経済にとり重要な課題として、景気の安定化、財政再建、行政改革があげられる。とりわけ経済構造改革は日本の将来の命運を分ける重要な課題である。総選挙に当たっては、各政党が明確な公約を掲げ、政党間で自由な政策論争を行ない、国民が選択しやすいようにすべきである。

    利益配分型政治を廃し構造改革を:野田氏

    従来、自民党は、許認可や予算配分を背景とした利益配分型政治を行なってきた。野党になり、権限を失ったため、かえって政権に固執し、社民党を総理に据えてまで連立を組んだ。これは3年前の総選挙における国民の選択とはまったく異なっている。
    経済の閉塞状況を打開するには、法人税などの企業負担軽減、内外価格差の縮小、許認可等の規制緩和などを図る必要がある。
    新進党は消費税率の据え置きを主張しているが、財政再建にも与党以上に真剣に取り組んでいる。消費税率を2%引き上げるだけでは財政再建は達成できず、むしろ民主導型経済を実現し、経済を活性化することが重要だ。そのため、今世紀中を視野に置き、税制の直間比率の是正を含めた構造改革のための提言を近々とりまとめることにしている。

    法人税依存体質からの脱却が必要:牛嶋氏

    わが国の税制は法人税依存体質のために歪んだ構造になっている。21世紀に向け、法人税依存体質からの脱却が重要な課題である。主要税目は(1)所得税・法人税、(2)消費税、(3)その他の税とし、それぞれ4:4:2とすることが望ましい。法人税は当面、10%程度引き下げられよう。連結納税制度については今後検討することになる。

    時代に応じて政府の役割を見直す:倉田氏

    欧米へのキャッチ・アップの時代は終焉し、護送船団型の霞が関行政を抜本的に見直す必要がある。ニュージーランドの例に見られるように、行革の命題はすべての既得権益の除去であり、利益の再配分である。

    強力な改革政権が必要:鹿野氏

    今日のわが国の閉塞状況は、戦前の状況と共通する面がある。つまり政治が行政をコントロールできずに、官僚(軍)に政治がコントロールされているという状況である。これを打開するには新たな政治の枠組みをつくり、国民の選択の幅を拡げていく必要がある。
    総務庁長官時代、許認可等の1割削減を政治決断として実行したが、その際「予算を削られるよりも権限を奪われる方がつらい」という官僚の本音を知った。行政との癒着を切り離した、強力な改革政権でなければ改革は実現できない。新進党はそのための政党である。

  3. 改革の論点
    1. 消費税凍結、補正予算について
    2. 野田氏:
      財政再建のために消費税を引き上げるという穴埋め論ではだめだ。現政権は、選挙後に補正予算で公共事業を行ない、結局財政収支をさらに悪化させようとしている。経済構造の改革による経済再建なくして財政再建はない。
      併せて歳出を徹底して見直す必要があり、事業毎に5カ年計画を立て、地域のインフラを霞が関が考えるというような仕組みを抜本的に見直さなければならない。
      新進党としては、特別減税は継続し、補正予算については、従来型のものは行なわない。ただし、新事業を生み出すような分野に重点配分するのであれば、補正予算も検討の余地はある。

    3. 社会保障制度の見直し
    4. 鹿野氏:
      社会保障については多様な選択肢を国民に提供する方向で検討する。来世紀以降の消費税引き上げ分は地方に移管し、主として福祉に使うという姿が考えられる。

    5. 行政改革
    6. 野田氏:
      行革についてはまだ党としての成案ができていないが、公務員定数削減、天下りの抑制、地方分権、議員定数削減などを打ち出すつもりである。

      鹿野氏:
      党としての意思決定はまだだが、行革プロジェクトチームとしては、まず行政の頂点である大蔵省改革に着手したい。 規制緩和については情報通信、金融証券、住宅土地の3分野を柱に取り組み、新たな雇用・産業を確保していく。

    7. 今後の政治のあり方
    8. 野田氏:
      連立政権というものは尻尾が頭を振り回すようなものだ。単独過半数がとれないなら、少数与党の政権でもよいのではないか。新進党としては第1党を目指す。小選挙区制導入の原点は、有権者の力で政権を交替可能ならしめることであり、中選挙区制より一票一票が生きるようにすることだ。

会場風景
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