経団連くりっぷ No.40 (1996年 9月26日)

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豊田会長、ケニア日本人商工会でじっくりと語る


ケニアのナイロビに日本人商工会がある。会員の数はそれほど多くない。豊田会長は自然保護基金運営協議会の後藤会長とともに、8月4日から7日にかけて、アフリカの難民キャンプ視察のためケニアを訪問した。豊田会長が商工会の歓迎夕食会で、堀内大使、前田商工会会長をはじめ日本人ばかり約40人の方々を前にして約30分程度スピーチをされたのは、最初のキャンプ訪問と次のキャンプ訪問との間の8月6日のことであった。この段階ですでにモイ大統領との会見は済んでいた。
ここで紹介させていただきたい内容は、当然と言えば当然のことながら、第1が難民問題で、もう1つはアフリカ問題、具体的にはケニアへの経済協力問題である。

「難民の表情は想像していたよりも平穏で、また食料や衛生状態も比較的良好であった。籠編みとか木彫など仕事をしている人もおり、仕事があることが生きる張り合いになっていると思う。こうしたことすべてがUNHCRの人々やボランティアの人たちの渾身的な努力によるものと深く感銘を受けた。受け入れ国側は財政に負担がかかり、かつ調理用の燃料として森林が伐採されてしまうという環境破壊に直面している。
経済界として必要な支援は続けるが、難民を生み出さないこと、難民支援は難民が自主的に帰還できるようにすることが理想であり、それらを可能とするような政治的、経済的環境を国内的にも国際的にもつくりだすことが肝要であると思った。
世界の若者がボランティアとして大勢働いているのを見て、日本の若者も現状に満足せず、世界の厳しい現実をみて、世界に貢献してもらいたいと思った。
アフリカ問題、とくにケニアへの経済協力についていえば、率直にいってトヨタも車を売るばかりでなく、ケニアに対して農業協力などをしなければならないと感じた。農業が振興され、国民総生産が拡大されてはじめて車を売る本当の余地も出てくる。アジアの発展を考えると、やがて食料問題も生じよう。ケニアには多くの未開発の農業適地もある。ケニアで農業開発をすることもよいのではないか。献金をやめた経団連の存在理由の1つは、世の中に必要なことを提言して、実行することである。」

―以上の趣旨の豊田会長のスピーチを聞いた参会者は、異口同音にすがすがしく、かつしみじみとしたお話であり、深く心に残ったと述べていた。
(月刊 Keidanren 10月号に関連記事掲載)


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