農政問題委員会報告書/9月17日
ウルグアイ・ラウンド合意に基づいて、食料加工品関税がすでに引き下げられている実態に鑑み、当面、現行の価格支持制度の下で、行政価格水準を引き下げていくことが必要である。政府は、今後5年程度を視野に入れた行政価格引き下げの目標を定め、その実現に向けて、農地の流動化・集団化や効率化・省力化に資する機械の開発・導入など、生産性向上に資する諸施策を展開していくべきである。
ちなみに政府は、1993年9月に公表した農政審報告等において、稲作以外の主要経営部門について、10年程度後の生産コスト(費用合計)の目標水準として、1990年の生産費のおおむね6〜8割程度にまで削減することを掲げている。政府は少なくとも、これらの生産コストの目標水準を達成できるよう、実効ある施策を展開すると同時に、これにより実現された生産性向上分は着実に行政価格を引き下げ、食品工業企業や消費者に還元していくべきである。
加えて、行政価格の引き下げのみならず、国境措置についても同様に、関税率や関税相当量を自主的に引き下げるとともに、関税割当枠の拡大や関税割当に伴う国産農産物の引取義務を廃止する必要がある。
中長期的には、現行の消費者負担型の価格支持制度等を廃止し、これにかわる政策手段を検討すべきである。具体的には、国民の支持が得られる範囲で、経営規模の拡大を目指す中核的農家や、地域経済の安定や環境・景観保全等の観点から、特に農業を維持する必要性が認められる農家に対して限定的に、財政による直接的な所得補償を行なう制度に移行するなど、政策の重点化・効率化を図っていくことが必要である。
直接所得補償制度の検討にあたっては、その財源をいかに確保するかという問題が生じる。これについては、96年度予算で 3.6兆円にものぼる農林水産関係予算全般を見直すとともに、政策目的に応じて地域限定や所得制限を行なうなど、直接所得補償制度の適用対象を限定することによって対応すべきである。