中東・アフリカ地域委員会(共同委員長 笠原幸雄氏)/9月19日
笠原委員長(左)とメレス・エチオピア首相(右)
戦後をみても、セラシエ皇帝(当時)は、1956年と70年の2度訪日しており、また現在の天皇皇后両陛下も、皇太子時代にエチオピアを訪問されている。日本の企業も早くからエチオピアに注目し、投資してくれた。
しかし70年代前半、わが国では内戦が始まり、日本との関係は急速に冷え込んだ。内戦および治安の悪化と、当時の政府の国営化政策は、日本企業の投資とエチオピア経済の発展を20年間阻んでしまった。
民主共和国に生まれ変わったここ5年間に状況は大きく変わり、この不幸な時代は過去のものとなった。内戦は終結し、政治は安定しており、国民の多様性を許容する民主的な政治システムを構築した。異なる意見を持つ者が武力に訴える必要はなく、法的に平和裏に議論する土壌が醸成された。
また混乱するアフリカにあって、エチオピアだけが平和を享受することはなく、隣国のソマリア、スーダン、ルワンダ、ブルンディ各国の内戦やエリトリアとイエメン間の紛争等の解決にも協力している。
前政権が採用していた国営化政策も過去のものになった。現政権は、民間主導の経済開発こそが国に繁栄をもたらすものと確信している。ここ数年の間に、世銀・IMFの指導の下、多くの経済改革プログラムを導入しており、その結果、広範な経済の自由化が達成された。投資も為替管理も自由化され、利益送金も無制限に可能となった。国営企業の民営化も進めている。政府の役割は、インフラ整備および最低必要な法規制を行なうにとどめ、民間活力を最大限引き出したい。
外資の保証を明確にするため、エチオピアはMIGA(多国間投資保証機関)に加盟した。二国間の投資保証協定を締結する用意もある。
エチオピア経済は安定しており、ちなみに昨年のインフレ率は0.9%、経済成長率は7.7%である。
現在、賦存する豊富な鉱物資源の開発に取り組んでいる。例えば、天然ガスの埋蔵量は600億立方メートルと確認されている。金鉱も豊富で、まだ一部に手がつけられたのみである。
農牧業も高い成長の可能性を持っている。アフリカ諸国中最大で、世界においては第10位にランクしている。穀物や、野菜・果物、伝統的産物のコーヒーについても、生産拡大の可能性は高いと考えている。数年前まで飢餓の国と言われたエチオピアの農産物生産高は過去4年間で3倍増となった。かつて年間100万トンの食糧援助受領国が、今年は50万トンの食料を輸出するまでに変貌している。
正しい政策、安定した政権、自ら勝ち取った平和と治安、5,500万人が貧困と戦う国、それが今日のエチオピアである。豊富な天然資源もあり、ようやく先進諸国の企業とビジネスを語れる段階に達したと思う。多くの人々が東アジアの奇跡を賞賛するが、アジアの発展には、日本を先頭とした雁行体形があった。エチオピアという雁も、今ようやく発展に向けて飛び立とうとしている。
エチオピア政府は、これからも障壁撤廃のために努力していく。問題があれば、政府の貿易諮問委員会が速やかに解決策を提示する等、苦情処理にも力を入れている。
最近改訂された投資法は、投資のための設備輸入や部品供給に対する免税措置、法人税の引き下げ、各種インセンティブの提供などが主な柱となっている。
当面、エチオピア経済の復興と一層の開発を進めるために、農業分野、インフラ整備、食品産業、繊維産業、医薬、建設および建設機械、鉱業、不動産業、観光業等に対する新規投資を歓迎しており、国営企業の民営化に対する日本企業の参加を期待している。