資源・エネルギー対策委員会(委員長 篠崎昭彦氏)/9月24日
しかしながら策定以後、以下の4つの大きな変化があった。
第1に、エネルギー消費の大幅増と、依然として脆弱な供給構造である。エネルギー消費の伸びは年率1%程度という見込みを大きく上回り、94年度には 3.8%という高い伸びを記録した。95年度も3%を超えたと予想されている(景気回復等が原因)。
また、第1次石油危機以降進展した、エネルギー利用の効率化も、80年代半ば以降横ばいであり、この1、2年は悪化傾向にある。エネルギー供給構造についても石油依存度は横ばいであり、中東への依存度も依然として高い。
第2の変化はアジアにおけるエネルギー需要の急増である。1993年から2010年にかけてのエネルギー需要の見通しでは、世界全体では1.46倍であるのに対し、アジアでは2.15倍となっている。これは中国等における人口の急増、経済急成長等が原因と考えられる。アジア地域の石油依存度もさらに高まると予想される。(1992年55%→2010年70%)
第3に地球温暖化問題の深刻化である。エネルギー需要の拡大に伴ってCO2排出量も増大しており、このままでは「2000年以降、一人当たりCO2排出量を1990年レベルでの安定化を図る」、とのわが国の国際公約(92年の地球サミットでの気候変動枠組み条約に基づく)の達成は不可能と思われる。来年12月に京都で開催予定の気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3)の議長国としての立場もある。COP3では2000年以降のCO2排出抑制のあり方について結論を出すことになっており、国ごとの努力を反映した差別化された目標を主張しているわが国にとって、差別化目標は取扱いが複雑すぎるとして一律抑制を主張している英、独、北欧諸国等にどう対応するかが問題である。
さらにCOP3における最大の課題は、今後CO2排出急増が予想される発展途上諸国との関係である。地球環境の悪化は先進国の責任であり、温暖化対策が必要ならば、技術・資金のいずれも先進国が供与すべきとする途上国に、いかに建設的議論に参加してもらうかが重要である。
第4の変化は、昨年末の「もんじゅ」の事故以来の原発立地に対する国民世論の動向である。
これらの情勢の変化を踏まえ、総合エネルギー調査会基本政策小委員会では、今後のエネルギー政策や地球環境問題への対応のあり方等の検討の一環として、2030年に向けたマクロ・エネルギー需給モデルによるシミュレーションを実施した(省エネ・新エネと原子力の進捗度に関する4つのケースを想定)。この結果、省エネ・新エネ施策を最大限強化し、現行計画通り(現在49基の原発に50基を追加)原発立地を実現して、石油依存度を16%に低下させた場合に、ようやくCO2 排出総量が90年レベルに抑制可能となることが示された。やや極端な試算ではあるが、これを機会に、エネルギー問題に関する国民的議論の高まりを期待している。新エネ開発についても、来年度を「新エネ元年」として注力していく。また、省エネ法の運用強化、技術開発の推進等も進めていきたい。
長期化傾向にある原発立地の推進については、総合エネ調原子力部会で年内を目途に検討中である。なお、先般の新潟県巻町での住民投票を踏まえ、大消費地向けの広報等も含め、今後の広報活動を考えたい。 また、石油・ガスの民間自主開発をバックアップするとともに、産油国との関係強化に努めたい。技術移転や投資等、産業界全体でもご協力願いたい。