経団連くりっぷ No.41 (1996年10月 9日)

国土・住宅政策委員会(委員長 古川昌彦氏,共同委員長 田中順一郎氏)/9月27日

「むつ小川原工業開発」への支援強化と土地・住宅分野の規制緩和要望の基本方針を決定


政府は、来年3月の閣議決定を目指して、戦後5つ目の全総計画となる「新しい全国総合開発計画」を策定中である。国土・住宅政策委員会では、9月27日、1969年に閣議決定された2つ目の全総計画である「新全国総合開発計画」において、大規模開発プロジェクト構想の1つとして位置づけられた「むつ小川原開発」につき、3項目からなる要望「むつ小川原開発をめぐる当面の課題」(案)をとりまとめた(正式な建議は10月15日に予定。次号全文掲載)。
加えて、来年3月の政府「規制緩和推進計画」の第2次改定に向け、経団連でとりまとめ中の要望のうち、土地・住宅分野の要望について、その要旨を田中共同委員長から説明し、了承を得た。これらの要望は、他の分野とともに、10月下旬に開催される予定の経団連行政改革推進委員会の審議を経て、政府関係方面に建議される。
以下は、古川委員長と田中共同委員長の説明概要である。

  1. むつ小川原開発の現状と課題
    −古川委員長説明
    1. むつ小川原開発の現状
    2. むつ小川原工業基地は、1969年に策定された新全総においてナショナル・プロジェクトとして位置づけられた。以来、大規模臨海型工業基地として整備が進められてきたが、石油化学コンビナートの建設を中心とした立地計画は、2度の石油危機や円高の進展により修正を余儀なくされ、2870haの工業用地・住宅地のうち、現在、1770haの用地が未分譲のままになっている。

    3. 経団連の取り組み
    4. 経団連では、93年5月にむつ小川原開発部会を設置し、関係省庁、青森県、北東公庫とともに、
      1. 民間大型立地の推進および国家的プロジェクトの誘導、
      2. 基幹的インフラおよび高度都市機能の整備、
      3. 分譲価格の引き下げおよび立地優遇措置の強化、
      4. 安定的低利資金の導入、
      5. 増資、
      の5項目からなる総合的支援措置を決定し、官民で連携して、それらを実行してきた。
      今般、政府の「新しい全総計画」策定の機会に、改めてむつ小川原開発の意義を再確認し、むつ小川原開発株式会社への支援を強化すべきである。

    5. 要望項目
    6. 要望項目としては、
      1. 大型研究施設の立地などを求める国家的大型プロジェクトの誘導、
      2. むつ小川原港の整備などを求める各種インフラの整備、
      3. 財投制度全体の見直しの中での安定的低利資金の導入、
      の3項目としたい(詳細は次号)。

  2. 規制緩和推進計画の第2次改定に向けた要望〔土地・住宅分野〕について
    −田中共同委員長説明
    1. 土地・住宅政策の基本的視点
    2. 大都市圏の地価は住宅地、商業地ともに6年連続して下落している。資産デフレ状況を解消し、市場メカニズムを正常化させ、不動産事業の活性化を図ることにより、国民が豊かさを実感できる経済社会を実現すべきである。その観点から、土地利用・建築関連規制の合理化、土地の計画的利用を通じて都心部の優良な都市再開発や郊外部の大規模住宅開発など、土地の有効・高度利用を図ることが不可欠である。

    3. 土地取引に係わる規制の見直し
    4. 資産デフレの要因であった厳しい地価抑制策の1つである土地取引の届出制度の見直しが必要である。

    5. 開発行為に係わる規制の合理化
    6. 大都市圏における土地の有効利用を促進するためには、地域の実態に則した合理的な土地利用を推進すべきである。具体的には、農地転用、林地開発の許可基準等の見直し、市街化区域内における地域森林計画の廃止などを行なうべきである。
      大都市近郊における良質な住宅地等の供給のためには、市街化調整区域内においても、計画的な宅地開発の推進が必要である。
      また、開発許可申請の処理期間の明確化、期間の短縮、さらには開発指導要綱の抜本的見直しなどが必要である。

    7. 土地区画整理・都市再開発等に係わる規制の見直し
    8. 市街地における土地区画整理事業や再開発事業は、土地の有効・高度利用と都市機能の更新を図るための有効な手段である。土地区画整理事業における関係者の法定同意割合の遵守や、都心部の土地の有効・高度利用のための各種のインセンティブ・ゾーニング制度を活用した容積率割増し、用途規制等の緩和、前面道路幅員に係わる容積率の緩和などを行なうべきである。また不動産特定事業法の緩和も求められる。

    9. 建築に係わる規制の合理化
    10. わが国の建築基準法は、制定以来46年が経過しており、時代に則した見直しが求められている。見直しの方向として、単体規定は性能に関する規定を中心とした最低基準であることを徹底し、必要最低限を仕様規定とする必要がある。具体的に取り組むべき課題としては、
      1. 建築確認申請の簡素化、
      2. 住宅輸入の促進に係わる規制緩和、
      3. 住宅の高機能化・質的向上に係わる規制緩和、
      などがあげられよう。

    11. 各種業法に係わる規制の見直し
    12. 宅地や建物の建築、取引等に係わる者には高い信用力が求められるが、合理的ではない規制はかえってそのコストの増嵩を招く恐れがある。コスト削減の観点から、具体的措置を講じる必要がある。

    13. 工場立地に係わる規制の見直し
    14. 産業の空洞化が懸念される状況を踏まえ、工場立地法で求められる諸規制の見直しとともに、工業(場)等制限法を緩和する必要がある。

    15. 許認可に伴う行政書類の削減
    16. 行政書類については、
      1. 書類の重複記載の削減や窓口の統一、
      2. 書式の共通化、
      3. 記載内容の廃止、
      4. 記載負担の割にはその効果が疑問なものの合理化、
      を要望する。


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