経団連くりっぷ No.41 (1996年10月 9日)

東亜経済人会議日本委員会(委員長 服部禮次郎氏)/9月5日〜6日

東亜経済人会議第8回幹部会議を開催


東亜経済人会議日本委員会では、台湾の桃園において台湾側と第8回幹部会議を開催した。日本側からは服部委員長以下13名、台湾側からは辜振甫東亜経済会議中華民国委員会会長はじめ17名が参加し、両岸情勢と香港返還が日台双方の経済貿易におよぼす影響や、台湾のアジア太平洋オペレーションセンター計画、WTO加盟問題などについて意見交換した。
また、昼食会には江丙坤・行政院経済建設委員会主任委員がスピーチを行ない、夕方の夕食会には李登輝総統が臨席し、日本側代表団と親しく懇談した。

  1. 会議の冒頭、両岸交流の台湾側窓口を務めている辜振甫会長から、最近の両岸関係について説明があった。両岸は1994年にシンガポールで第1回の民間トップ会談を開催し、その後も9回にわたって事務レベル会合を開いたが、昨年の李登輝総統の訪米以降、交流は途絶えている。辜会長は両岸民間トップ会談の再開が最優先課題であるとした上で、「中台双方において『一つの中国』という原則に相違はないが、台湾は両岸が分離しているという現実を踏まえて国家統一を目指している。これに対し、中国は最初から台湾の存在を黙殺している」と台湾の立場を強調した。しかし、政治的に冷却しても、両岸はともに経済交流の重要性を認識しており、将来的には「双方とも不満だが、我慢できる」方法を見つけていきたい、と述べた。

  2. 香港返還については、返還が円満に行なわれることを希望することで日台双方が一致したものの、台湾側からは香港の将来についてかなり悲観的な意見が出された。台湾側の説明によれば、香港が繁栄した要因は (1)天然の良港、(2)中継貿易の発達、(3)政治的な自由であり、返還後は(3)の要因が失われるのではないかとの懸念が示された。また、日本は香港の将来を楽観し過ぎている、との指摘もあった。

  3. 台湾が現在、官民を挙げて取り組んでいる「アジア太平洋オペレーションセンター計画」については、江丙坤・行政院経済建設委員会主任委員からその概要について説明があった。同計画は規制緩和とインフラ整備によって、台湾をアジア太平洋地域の中心にしようというものである。

  4. さらに、江主任は、台湾のWTO加盟に向けた作業状況についても言及した。日本は台湾との二国間協議において、欧米や他のアジア諸国に比べて関税引き下げなどの面で強い要求を出しており、このままでは台湾の加盟に支障が出ると心配している、との厳しい指摘があった。江主任は台湾のWTO加盟が順調に進むよう、日本側の協力を要請した。

  5. この他、本年12月19〜20日に東京で行なわれる第24回東亜経済人会議の進め方についても意見交換した。


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