経団連くりっぷ No.41 (1996年10月 9日)

日本ベネズエラ経済委員会(委員長 亀高素吉氏)/9月24日

最近のベネズエラの政治・経済情勢について


日本ベネズエラ経済委員会では、外務省の山下中南米局中南米第2課長との懇談会を開催し、最近のベネズエラの政治・経済情勢について懇談した。以下は山下課長の説明の概要である。

  1. 政治情勢
  2. 1994年2月に大統領に就任したカルデラ大統領は選挙期間中から大衆迎合的な政策を掲げていたが、就任直後に発生した金融危機への対応のため、引き締め政策をとった。この結果、経済界からの反発が徐々に高まった。汚職、腐敗の防止等への真摯な取り組みにより、当初、国民の高い支持率(95年2月、70%台)を得ていたが、長引く経済不況のため支持率は95年10月には、30%台へと低下した。

  3. 経済の近況
  4. 94年1月のラティーノ銀行の経営破綻に始まる金融危機は、未曾有の経済危機に発展した。政府は同年6月、物価統制および為替管理等の緊急経済措置を実施し、混乱は収拾されたものの、その後、生産活動は著しく停滞し、GNPは93年にマイナス0.2%、94年はマイナス2.9%に低下した。95年は2.2%とプラスに転じたが、公的石油部門の伸びによるもので、必ずしも経済状況が好転したと言える状況ではない。
    物価上昇率は94年に70%、95年も56.6%と必ずしも小さくない。また、失業率も95年が10%を超えるなど、数字だけを見ると明るい材料が見当たらないといった状況である。
    政府は95年秋からのIMF等との協議を踏まえ、今年4月に構造調整政策を発表した。内容は為替管理の自由化、金利の自由化、ガソリン価格の約10倍の引き上げ等からなり、これら構造調整政策実施のため、IMF、IDB、世銀との間で総額33億ドルの借款の供与に係る基本合意がなされた。

  5. わが国との経済関係
  6. ベネズエラからわが国への主要な輸出品はアルミニウム、原油、鉄鉱石などであり、94年の輸出額は3.5億ドルである。
    一方、わが国からの主要な輸出品は自動車、機械、電気製品であり、輸出額は4.2億ドルである。
    また、わが国の直接投資の累計は95年で約5億ドルである。90年から95年半ばまでの間に、2億6,000万ドルの投資が行なわれており、数字上はこの5年間にわが国企業のベネズエラに対する関心が高まったように見受けられるが、依然、ベネズエラ経済の不安定な状態が続いており、ここのところわが国からの投資は伸びていない。
    今後、両国の経済関係を拡大させるためにも、ベネズエラ側が上記構造調整政策を着実に実行することが不可欠である。


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