経団連くりっぷ No.41 (1996年10月 9日)

情報通信委員会(委員長 藤井義弘氏)/9月18日

情報通信市場の現状と政策課題につき谷郵政省電気通信局長より聞く


情報通信委員会では、谷公士郵政省電気通信局長を招き、「情報通信市場の現状と政策課題」について説明を聞くとともに、種々懇談した。谷局長は、「技術開発の動向やそれを支える経済力、また、変化への社会の対応力、国際的な潮流を見極めながら、多くの可能性に対応できるような柔軟な枠組みを構築していく必要がある」との見解を示した。

  1. 谷局長説明要旨
    1. 情報通信産業の役割
    2. 情報通信産業には、料金の低廉化、安定的な提供、品質の維持・向上等を通じて、情報通信サービスを効率的に提供することが求められる。同時に、短・中期的には日本経済を牽引し、中・長期的には社会経済システムの構造改革を促すインフラとしての役割を担うことが期待されている。

    3. 今後の政策課題と郵政省の取り組み
    4. 今後、情報通信市場の発展と新しいマルチメディア社会の形成に向けて、技術開発の動向やそれを支える経済力、情報技術への社会の対応力、国際的な潮流、を見極めながら、多くの可能性に対応できる柔軟な枠組みを構築していく必要がある。

      1. 実質的な競争体制の確立

        (1) NTTの再編成
        NTTは、地域通信網を構造的に独占しており、県内通話で 98.6%のシェアを獲得している。また、加入電話を介さない通話は全通話回数の 1.4%に過ぎない。NTTの在り方については、96年2月の電通審答申の趣旨に沿って、関係者の意見も聴取しつつ、次期通常国会に向けて結論を得ることができるよう引き続き検討を進める。

        (2) 規制緩和
        本年3月に閣議決定された規制緩和推進計画に沿って、第1種電気通信事業への参入に係る過剰設備防止条項の削除、KDDの国内業務提供、移動体通信料金の届出制化を進めるとともに、公専公接続解禁の前倒し実施、外資規制の緩和等を図っていく。

        (3) 接続の推進
        ネットワークの相互接続については、接続条件の透明性を確保し、NTT地域通信網との多様な形態での相互接続を推進する観点から、基本的なルールとして策定すべき具体的内容を年内に決定する予定である。

      2. 新しいマルチメディア社会形成に向けての環境整備

        (1) 政策課題
        マルチメディア社会の形成に向け、情報通信インフラの整備、高度アプリケーションの開発支援、サイバービジネスや電波ビジネス等のニュービジネスの振興、通信・放送融合への対応等のマルチメディア社会に対応した枠組みの整備、安全性への対応や利用の適正化等の利用環境の整備を図っていく。

        (2) サイバービジネス発展に向けた取り組み
        特に、サイバービジネス(情報通信ネットワーク内のビジネス空間・社会的空間を提供し、その中で商品の受発注、決済等、取引や相互交流を実現)の発展のため、今後、i)次世代インターネット、ii)電子マネー等の伝送に資する通信の安全・信頼性向上技術、iii)コンテントの保護・流通のための電子透かし技術等に関する研究開発を推進していく。

  2. 懇談
  3. 経団連側:
    郵政省は、いかなる基準で地域通信と長距離通信を分けているのか。
    谷局長:
    厳密には、いわゆる加入者網の部分が地域網と呼ばれているが、実質面に着目して県内か県外かを目安にしている。

    経団連側:
    規格の標準化を進める上で、官の役割についてどのように考えているか。
    谷局長:
    民間の技術開発競争の中で、一定の標準が決まれば、その方式の国際標準化に向けた働きかけをしていく。

    経団連側:
    周波数の配分に関する郵政省の考え方を伺いたい。
    谷局長:
    事業内容と競争促進につながるかどうかを総合的に勘案して割り当てていく。入札制については、白紙である。

    経団連側:
    マルチメディア社会形成に向けた環境整備に取り組む際は、同様のプロジェクトを複数の官庁で行なうという無駄が起きないようにしてほしい。
    谷局長:
    郵政省は、すでに複数のプロジェクトで、他省と連携している。今後も、無駄が出ないように努力していく。

今後の政策課題と郵政省の取り組み


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