経団連くりっぷ No.41 (1996年10月 9日)

農政問題委員会合同部会(座長 山崎誠三氏)/9月20日

荏開津千葉経済大学教授より、今後の農政改革に向けた課題について聞く


農林水産省では、1961年に制定された農業基本法に代わる新しい法律の制定に向けて、昨年9月から検討に着手しており、その一環として、去る9月10日、「農業基本法に関する研究会」が報告書を公表した。そこで、同研究会の座長を務めておられた千葉経済大学の荏開津教授を招き、同研究会における検討内容や今後の農政改革に向けた課題等について、説明を聞くとともに意見交換を行なった。
併せて、本年度末に予定されている政府の規制緩和推進計画の改定に向け、農業分野に係る規制緩和要望(案)について審議を行なった。

  1. 荏開津千葉経済大学教授説明要旨
    1. 農業基本法見直しの経緯
    2. 食管法、農地法、農協法、土地改良法は、昭和20年代に作られたもので、統制的な色彩が強い。食管法は昨年廃止されたものの、残り3法は、半世紀経った現在でも、わが国農政の基本的な枠組みとして残っている。
      一方、耕地面積は30年間で約 100万ha減少し、農村における高齢化の進展は著しい。また、円高を背景に農産物の内外価格差も拡大した。高度経済成長期には、他産業部門が農業・農村を保護するゆとりがあったが、低成長期の現在ではそのようなゆとりは乏しく、また農業もWTOのルールに組み込まれた。このような状況下で、農林水産省をはじめ農業関係者も、抜本的な農政改革の必要性を認識している。
      農政の見直しにあたっては、農業基本法を廃止して新基本法を制定すると同時に、農協法や農地法、土地改良法も廃止する方向で進めるべきである。

    3. 農業基本法見直しにあたっての視点
    4. 農村が豊かになった現在、従来のような貧農救済の観点からの農業保護は不必要である。国全体の立場から、国内に農業・農村を残しておく必要があるかどうかという観点で、検討すべきである。つまり、消費者(全国民)の立場を基本とし、食品産業や海外の視点も考慮すべきである。農業・農村を残しておく必要があるとすれば、わが国の国土条件、賃金水準を考慮し、ある程度の保護措置は必要となろう。
      食料自給については、防衛と同様、危機管理政策の一つとして考えるべきである。戦争勃発を想定して、最低限の国内生産は維持していくべきである。
      また、農産物の生産には天候による変動を免れ得ないことから、ある程度の価格安定策は必要と考える。
      中山間地域対策については、農業政策の枠を超えて、農村地域全体の土地利用に係る基本方針を策定する必要がある。まず、国土の計画的な有効利用、秩序ある利用を実現する強力な制度の確立が不可欠である。

  2. 当会側意見
    1. 食料自給について、国内生産のみならず備蓄も有効な手段となるのではないか。

    2. 新基本法の制定と同時に、農地法、農協法等の抜本改正も行なうべきである。


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