経団連くりっぷ No.41 (1996年10月 9日)

企業行動憲章部会(部会長 小野敏夫氏)/9月24日

日米欧でまとめた「企業の行動指針」


企業行動憲章部会では、11月末を目途に「経団連企業行動憲章」の見直し作業を進めている。第2回部会では、国際MRA日本協会の藤田幸久専務理事を招き、94年に国際MRA協会の関連組織であるコー円卓会議が発表した「企業の行動指針」についての説明を伺うと共に種々意見交換した。以下は藤田専務理事の説明の概要である。

  1. 日米欧のビジネスリーダーが協力してまとめた「企業の行動指針」
  2. コー円卓会議は、激化する対日貿易摩擦に対する欧米の感情的反発やジャパン・バッシングの兆候に危惧を抱いたオランダ・フィリップス社のフィリップス元会長等の呼びかけで、86年に日米欧のビジネスリーダーが集まって設立した民間組織である。設立以来、国際的な競争のルール作りや企業の社会的責任を明らかにすべく検討を行ない、その検討結果を94年に「企業の行動指針」として発表した。企業の行動規範について日米欧の民間経営者が共同で策定したのは初めてである。

  3. 企業の行動指針の構成
  4. 「企業の行動指針」は、第1章前文、第2章一般原則、第3章ステークホルダーズに関する原則の3章で構成されている。
    前文ではまず、企業行動の規範として法と市場の力が必要ではあることは勿論だが、企業の意思決定においては道徳的価値も不可欠であることを指摘した。また第2章の企業の責任に関する一般原則では、富の分配面(社会貢献)を強調する欧米に対して日本側からは、富と雇用の創造面での企業の責任を指摘した。また第3章のステークホルダーズに関する原則は、米国ミネソタ州の代表的企業が集まって企業の行動指針を従業員、顧客、地域社会などのステークホルダーズごとにまとめた「ミネソタ原則」の精神を盛り込んだ内容になっている。

  5. 指針を実行していくための方策
  6. この指針を一般に普及し、指針内容を実行していく方策としては、
    1. 最高倫理責任者の任命、
    2. 外部の専門家による倫理監査の実施、
    3. 日常的な従業員教育、倫理研修の実施、
    4. 国際ルールの遵守、および企業の不正行為排除の姿勢を国際的に示す方針作り、
    などがあげられる。

    最高倫理責任者(Chief Ethics Officer)については、米国などでは副社長クラスを最高倫理責任者に任命し、経営トップと直結して企業倫理問題の解決にあたる企業が増えている。

  7. 企業行動規範作りに向けてのアドバイス
  8. 日本の企業行動規範には「〜べからず」的な内容が多い。しかしこれからの規範は、新しい時代に理想とされる企業の姿を描き、「〜しよう」という前向きで積極的な内容にすることが求められる。


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