経団連くりっぷ No.43 (1996年11月14日)
経団連意見/10月30日
接続ルールを中心に通信市場における競争促進に関する意見を取りまとめ
さる9月20日、電気通信審議会接続の円滑化に関する特別部会より「接続の基本的ルール案」が公表されたのを受け、情報通信委員会(委員長:藤井義弘日立造船会長)の通信・放送政策部会(部会長:三木利夫新日本製鐵副社長)では、同ルール案に対するコメントを中心に「通信市場における競争の促進に向けた課題」と題する部会意見を取りまとめ、上記特別部会に提出した。以下はその要旨である。
基本的考え方(略)
- 地域通信市場における競争の促進(略)
- 接続の円滑化による競争の促進
- ルール策定にあたっての基本的考え方
- 全事業者間の接続を可能・円滑にするための環境整備が必要。設備・機能の使用条件が社内外同一となるよう担保するとともに、合理的なコストとタイミングで接続が可能か否か事前に判断できるようにすべし。
- 今後、競争促進のためのルールについては、今回のような透明な手続きを経て決定するよう強く期待。また、予めルール見直しの手続きを明確化すべし。
- 接続の義務づけ
- 「全ての第一種電気通信事業者」を対象とし、さらに、その中で特定の事業者に対して追加的な義務を課すという電通審案の考え方は、現行の事業者区分を前提とすれば、妥当。ただし、第一種電気通信事業者の中で一定の事業規模に満たない者については、義務の執行を差し控えるか否かについて検討が必要。また、事業者間協議について標準的な期間を定めることを検討すべし。
- 加入者回線を指標として特定事業者の範囲を定義していることは妥当。ただし、定義そのものについては、さらに検討した上で、その根拠を明確化すべし。また、特別なルールの適用対象となる設備については、具体的に明記すべし。
- 特定事業者に関する特別なルール
- 特別なルールの一つとして、電通審案が、料金表・約款の作成を義務づけている点、設備・機能のみならず、それに併せて料金体系もアンバンドルするとしている点は妥当。
- 番号ポータビリティについては、費用負担のあり方を含めて具体的なルールを検討すべし。また、付加サービスへのアクセス、ダイアリング・パリティの確保についても、考え方を明らかにすることが必要。
- 料金表・約款の決定手続き
- 電通審案が申請資料を一般の閲覧に供し、第三者に意見表明の機会と苦情申立ての機会を与えていることは妥当。第三者の意見ならびに、それらに対する特定事業者の意見については、実名入りで公表すべし。また、第三者からの意見がなかった場合は速やかに認可する旨を明記し、不認可とする場合は、その理由を公表すべし。
- 料金表・約款によらない他事業者同士の接続協定については、認可の必要はなく、協定の公開のみとすべし。
- 接続会計制度ならびに接続料金の算定
- 接続のための会計制度を整備し、それに基づき接続料金を算定すること、ならびに不可欠設備管理部門が自社の営業部門と他事業者に対して不可欠な設備を同一条件で提供する方式が適当としている点は妥当。なお、現行のNTTの事業部制収支の必要性や接続会計との関係について考え方を明らかにすることが必要。
- 「接続との関連性を反映した費用帰属」を可能とする手法をとるとしている点はコストの範囲の適正化の観点から妥当。具体的な手法については、各手法の得失を明らかにするなど、さらに検討が必要。
- 特定事業者自ら不可欠設備のコストの合理化に取り組むようなインセンティブを与える仕組みを整備すべし。この点、電通審案が従来の総括原価方式に準拠した方式を改める方向を打ち出したことは妥当。一方、長期増分費用方式(当該接続により新たに必要となる費用を、非効率性を排除した形で算出する方式)については、検討のスケジュールを明確にするとともに、同方式によるモデルの作成に早急に着手すべし。同方式のように将来的なコストに基づいてモデルを作成する、あるいは、プライスキャップ制などのインセンティブ規制を導入し、特定事業者の合理化努力を促すとともに、行政の透明性確保、規制コストの削減を図ることが必要。
- 接続関連費用の負担のあり方
- 電通審案が、本来、ネットワークが有しておくべき機能として特定事業者がいったん改造費用を負担した上で、その回収のあり方を論じている点は妥当。
- ただし、回収のあり方については、以下のような形とすべし。
- 特定事業者の営業部門ならびに他事業者が同一接続料金で公平に負担すること
- その場合、特定事業者の営業部門が利用者料金として回収するか否かは特定事業者の判断に委ねるものとすること
- 多数事業者間接続の取り扱い(略)
- 相互接続と業務委託との関係(略)
- 赤字負担のあり方(略)
- 市場原理に基づく競争に向けたスケジュールの明示
- 接続ルールの策定の次に求められるのは、ユーザーに対する料金・サービス両面での利便性の一層の向上と、そのための規制緩和、特に料金・約款規制の緩和・撤廃に向けたスケジュールの明示。
- NTTにはそれ以外の事業者より厳しい規制を時限的に課し、競争の進展に応じて段階的に規制を緩和・撤廃していくべし。以上の観点から、料金・約款認可制を緩和・撤廃するとともに、NTTに対しプライスキャップ制を導入すべし。また、競争の進展に応じてNTTに対する料金・約款以外に関する規制も段階的に緩和・撤廃し、競争下で機動的・自主的に事業運営が行なえるような環境を整備していくことが必要。以上に加え、事業者区分の見直しなど競争の枠組みの抜本的な見直しをも睨んだスケジュールの明示が不可欠。
- ユニバーサル・サービスの負担のあり方についても検討が必要。
おわりに(略)
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