経団連くりっぷ No.43 (1996年11月14日)

日本銀行幹部との懇談会(司会 樋口金融制度委員長)/10月23日

規制緩和等により民間企業の活力を引き出すことが重要


金融制度委員会では、松下総裁はじめ日本銀行幹部を招いて常任委員会を開催し、内外の景況をめぐり意見交換を行なった。松下総裁からは「企業収益の改善による設備投資の回復、個人消費の景気回復など自律的な回復のメカニズムが動き始めている。他方、構造調整圧力は依然大きく、規制緩和等により民間企業の活力を引き出すことが大切である」との説明があった。

  1. 松下総裁挨拶要旨
    1. 国内景気は全体として緩やかな回復を続けている。特に、企業収益の改善が設備投資や個人消費の回復に結びつく自律的な回復のメカニズムが動き始めている。これが力強さを増せば、公共投資が減少しても回復が続こう。ただし、構造調整圧力は依然大きく、規制緩和等により民間企業の活力を引き出すことが大切である。

    2. 金融システム問題については、住宅金融債権管理機構の設立等金融6法の措置を実施するための枠組み作りはほぼ終了した。今後は、市場機能を最大限に活用すべく、決済制度の改善、ディスクロージャーの充実など金融インフラの整備が必要である。

    3. 日銀法改正については、経団連の提言を十分参考にしたい。日銀法改正によって、国際化、市場化の時代に相応しく、先進諸国に比べても遜色ない中央銀行制度になればと考えている。

  2. 海外の景況(各海外駐在参事より報告)
    1. 米国経済は、30年ぶりというバランスのとれた成長を続けている。本年第3四半期は、2〜2.5%程度の成長と思われるが、第4四半期は再び3%成長に戻るとみられている。懸念される賃金上昇の物価への影響は、企業のリストラにより医療保険関係費等の企業負担分がかなり軽減され、当面、賃金上昇分を相殺していくとみられている。他方、株価は、高値警戒感が徐々に出てきている一方、
      1. 中期的なミューチュアル・ファンドへの資金流入の継続、
      2. M&Aや自社株買い、
      3. 日欧との金利差
      などにより、直ちに調整が起こらないとの見方が出されている。

    2. 欧州経済は、ようやく明るさがうかがえる状況になった。通貨統合は、独、仏首脳が強い政治的リーダーシップを発揮して懸案の処理を進めたため、99年1月の実現の気運が急速に高まりつつある。市場も99年の統合を前提に、主要国の長期金利水準等に収斂傾向が見られる。ただし、各国の財政赤字削減策の実施が、脆弱な景気回復の基盤を損なわないか懸念する見方もある。
      他方、欧州各国は社会保障支出の削減や労働市場規制の弾力化等の構造改革に取り組んでおり、欧州も着実に変わりつつある。


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