経団連くりっぷ No.43 (1996年11月14日)

創造的人材育成協議会(会長 末松謙一氏)/10月24日

教育の自由化について議論を深めよ


創造的人材育成協議会では、日本経済新聞社の柴崎信三編集委員を招き、教育分野における規制緩和と教育改革の動向について説明を聞くとともに、種々懇談した。また、当日は、「創造的な人材育成に向けた規制緩和の推進」の基本的な考え方と、それに基づくカリキュラム編成の弾力化、教材選択の弾力化、遠隔教育の実施など、教育分野における具体的な規制緩和要望項目について審議し、了承を得た。
以下は、柴崎編集委員の発言要旨である。


末松会長

  1. 第3の教育改革
  2. 90年代における教育改革は、明治維新による学制、第2次大戦後の6・3制に次ぐ、「第3の教育改革」とも呼ばれるものである。この改革は、少子化、産業構造の変化、進学率の上昇など、社会の変化の下で、戦後の画一・量産型教育を見直し、若者の個性や持ち味を活かしながら、社会の多様性に対応しようとするものである。

  3. 高校教育における具体的改革
  4. 高校改革を参考として、具体的に取り上げてみると、まず、授業内容が大幅に変わった。例えば、理科では「総合理科」、英語では「オーラルコミュニケーション」など、新しい科目が設置された。また、自分の進路に合わせてコース・科目が選択できる総合学科制高校の設置や、学年ごとの進級認定がなく、必要な単位数の履修により卒業できる単位制高校の設置など、高校の形態自体が改革された。

  5. 改革における問題点
  6. しかし、このような改革は、必ずしも文部省の意図する方向には進んでおらず、県によっては、進学校の復活や、学校間格差を拡大させている。
    これは、一連の改革が、制度面での改革でありながら、教育の供給側の枠組みを変革するほどではないことに、要因があるのではないかと思う。

  7. 教育の自由化について議論を深めよ
  8. 教育の自由化については、中曾根内閣時の臨時教育審議会において、賛成・反対に別れて、大いに議論された。当時の教育の自由化反対論では、(1)基礎基本がないと上達しない、(2)真似・反復により発達するとの考えを基として、国の基礎的な知能レベルの担保の必要性を根拠としていた。この問題提起に対して、経済原理と教育がどこまで馴染むのかを検討するなど、教育の自由化について、もっと議論を深めることが、今後の教育改革を検討する上で、有益である。


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