経団連くりっぷ No.44 (1996年11月28日)

第23回北陸地方経済懇談会/11月6日

経済の活性化には、規制の撤廃・緩和が不可欠


「21世紀へ向けて活力と創造性あふれる経済社会を構築する」を基本テーマに、経団連・北陸経済連合会(北経連)の標記懇談会が、福井にて開催された。懇談会では、経済構造改革の推進、活力ある国土づくりと地域経済の活性化等について、意見交換を行なった。当日は北陸側からは谷会長をはじめ地元経済人約 110名が、経団連側からは豊田会長、末松副会長、青井副会長、樋口副会長、今井副会長、古川副会長が出席した。

  1. 北経連側発言
    1. 開会挨拶
      谷 正雄 北経連会長〔北陸電力会長〕
    2. 北陸地域の景気は、業種によりさまざまであるが、緩やかな回復基調にある。これを確かなものとするために、北経連としては、インキュベーターの啓発やベンチャー企業の育成を図りたい。また、規制緩和により民間活力を引き出し、経済構造の変革を進めることが不可欠である。
      現在策定中の次期全国総合計画では、「日本海国土軸」の実質的内容を伴った認知を是非ともお願いしたい。国土軸や広域拠点都市圏構想の骨格となるのは、道路・港湾・空港の社会資本整備である。北陸新幹線、国際コンテナ港等の建設など、公共投資の地方への重点的配分が必要である。

    3. 北陸経済の現状と課題
      市橋 保 北経連副会長〔福井銀行相談役〕
    4. 北陸地域では、個人消費が穏やかな回復傾向を示し、住宅建設は引き続き高水準で推移している。また、8年度の設備投資計画も昨年度に引き続き増加し、公共事業も堅調に推移している。産業別にみると工作機械、電気機械を中心とした設備投資産業で輸出が好調である。
      この背景には最近の円安があり、企業に余力がある現在、繊維産業をはじめとする「既存産業の高度化・高付加価値化の推進」のほか、「新産業の創出、新規企業の育成」に取り組む必要がある。そのためには、経済界の自助努力、企業と研究機関との連携、ベンチャー企業への経営支援が必要である。現在、北陸経済界が中心となって、企業、研究所等の技術交流、情報交換を目的とする北陸技術交流テクノフェアを毎年実施しているが、これをさらに拡充したい。

    5. 規制緩和と地方分権の推進
      江守幹男 北経連常任理事〔日華化学社長〕
    6. 21世紀の豊かな経済社会構築のため、規制緩和・撤廃によりビジネスチャンスを拡大し、さらに地方分権を推進していく必要がある。具体的には、新規参入規制、価格規制等の経済的規制の原則撤廃と行政の役割の抜本的な見直しを進めるべきである。 また、個性的な地域づくりの観点から、地域が自主的・総合的に政策展開できるよう機関委任事務制度の廃止、補助金制度の見直し、地方財源の創出、課税自主権の設定など地方分権を推進する必要がある。さらに、地方自治法の改正により制度化された「広域連合」を活用して広域プロジェクトを推進するには、地方自治体における行政体制の整備が必要である。

    7. 北陸地域の社会資本整備の現状と課題
      宮 太郎 北経連副会長〔大和会長〕
    8. 昨年12月に国土審議会がまとめた「21世紀の国土のグランドデザイン」には、「日本海国土軸」のイメージが示されているが、これに実質的な肉付けをし、新たな国土軸として認知される必要がある。そのためには、社会資本の整備が不可欠であり、特に北陸新幹線の建設促進が重要である。
      北陸新幹線について我々は、1973年の閣議決定以来、すでに24年も陳情を行なってきたが、未だ着工区間は一部に過ぎない。国は財政の悪化を理由に新規の着工を行なっていない。今後も北陸新幹線の建設促進に向け、北陸が1つとなって取り組むので、経団連には、理解と支援をお願いしたい。

    9. 新全総計画と北陸地域の拠点形成
      小野光太郎 北経連常任理事〔日本マイヤー会長兼社長〕
    10. 北経連では、本年7月にとりまとめた「日本海国土軸と北陸地域のあり方」の中で、(1)国際社会への貢献、(2)地域の交流・連携、(3)地方の自立・発展、(4)災害に強い国土という4つの視点から、日本海国土軸の形成を訴えている。また、新しい国土構造の中において北陸地方は、拠点性を発揮すべく、(1)「準中枢都市圏」、(2)日本海国土軸の中枢拠点地域、(3)環日本海交流の拠点としての役割を担っていくことが期待される。

    11. 環日本海経済交流と新たな動き
      黒川誠一 北経連常任理事〔セーレン相談役〕
    12. 北経連では、環日本海経済交流促進のため、広域的な産・官・学の組織として「北陸環日本海経済交流促進協議会」(北陸AJEC)を設立し、ハバロフスク市のダボス社や吉林省の吉林大学東北アジア研究院などと業務提携を結んで、活発な交流活動を展開している。また、北陸地方の港湾では、富山−天津−大連−上海の定期航路など新航路の開拓や、港湾の改善の動きが活発化している。
      環日本海経済交流の一層の進展のためには、日本国内における諸活動の連携・協調が不可欠である。さらに、環日本海に限定することなく、ASEAN諸国との交流を進めていくことも重要である。

  2. 経団連側発言
  3. 青井副会長が「経済構造改革を進めるためには、規制緩和、税財政改革の断行が不可欠」、今井副会長が「規制緩和に伴う痛みを受け入れ、積極的に規制緩和を活用すべき」、樋口副会長が「わが国を担う新産業・新事業が続々と生まれ育つような環境づくり」を訴えた。また、古川副会長が「国土づくりは地域が主役。経団連としても魅力ある地域づくりに取り組んでいきたい」、末松副会長が「日本海の対岸諸国との交流に関しては、政府より経済界が先行しており、地方経済圏の役割は重要である」と述べ、最後に豊田会長が「今後とも北経連との交流・対話を推進していきたい」と締めくくった。


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