経団連くりっぷ No.44 (1996年11月28日)

第9回評議員懇談会(座長 齋藤評議員会議長)/11月5日

政治情勢、規制緩和の推進、国際活動について評議員と懇談


齋藤議長はじめ130 名余の評議員の出席を得て、第9回評議員懇談会を開催した。当日は、齋藤議長、豊田会長の挨拶の後、(1)政治情勢と今後の経団連の対応、(2)規制緩和の推進、(3)経団連の国際活動についてそれぞれ関係委員長等より報告があり、これに基づき、評議員から積極的に意見が出された。

  1. 齋藤評議員会議長挨拶
  2. 戦後半世紀が過ぎ、わが国は明治維新、第2次大戦後に匹敵する歴史的転換期を迎えている。21世紀に向けて日本が活路を切り拓けるか否かは、1〜2年内に根本的な改革に着手できるかどうかにかかっている。
    民主導の経済システムの実現に向け、新政権は公約通り改革を進めるべきである。経団連も政治との対話を深めつつ、規制撤廃・緩和等の経済構造改革、脱規制社会に相応しい企業行動の見直し、国際社会への貢献等、活動を強化していただきたい。

  3. 豊田会長挨拶
  4. 官主導の経済社会を改革する上での重要な鍵は、規制撤廃・緩和の早期実現である。
    そこで10月28日、橋本総理大臣に直接、規制の撤廃・緩和の推進ならびに財政構造改革、税制改革の断行に、リーダーシップを発揮していただくよう訴えた。
    10月の訪欧ミッションでは、欧州首脳が国民に不人気な財政構造改革に果敢に取り組んでいるのを見て、大いに感銘を受けた。
    経団連では先般、「21世紀政策研究所」の設立を発表したが、シンクタンク機能の強化をはじめ、活動をより一層活性化し、評議員の皆様の期待に応えていきたい。

  5. 活動報告
    1. 政治情勢と今後の経団連の対応
      川勝評議員会副議長・企業人政治フォーラム会長
    2. 経団連では企業人と政治家との対話の推進、企業人の政治参加の促進を目的に「企業人政治フォーラム」を7月に設立した。以後精力的に活動を展開しているが、特に先の総選挙に際しては、豊田会長より全会員に投票率アップを呼びかけたほか、講演会の開催等により気運を盛り上げた。
      金のかからない政策本位の政治という観点から今回の選挙結果を見ると、政策については各党とも改革を公約に掲げ、問題はその後の実行に移った。選挙費用については以前より金がかかるとの意見と、かからなくなったとの意見の両論があり、今後十分検証していきたい。
      フォーラムは現在、3500人の会員を擁しており、年度内に8000人規模としたい。健全でスピーディーかつ実効性ある政治の実現に向け、活動を強化していきたい。

    3. 規制緩和の推進
      今井副会長・行政改革推進委員長
    4. 規制緩和は構造改革の最重要事項であり、経団連活動の基本に据えて取り組んでいる。
      10月28日には、政府の「規制緩和推進計画」の改定に向け、橋本総理に直接、包括的な要望を建議した。そのポイントは、(1)計画の大幅拡充を目指すため包括的に要望、(2)必要となる制度改善を具体的に記述、(3)重点分野について全体的な政策展開の方向・手順を提言、(4)規制緩和と申請等の負担軽減に分けて要望の4点である。
      全体で18分野886 項目あり、このうち農業、運輸、金融・証券・保険、医療・福祉、教育の5つが重点分野である。
      今後、要望実現に向け、新政権に強く働きかけるとともに、経済界から各論反対が出ないように会員にも呼びかけていきたい。

    5. 経団連の国際活動
      三好事務総長
    6. 豊田会長を中心に中国、韓国をはじめとするアジア太平洋諸国、欧州各国へのミッション派遣、政策対話を推進している。同時に、自由貿易体制強化や国際貢献について提言をまとめ、内外に働きかけている。

  6. 懇 談
    1. 日本コカ・コーラ 岩村相談役
    2. 経団連は大変な決意の下に構造改革に取り組んでいるが、一般社会の理解は必ずしも十分でなく「癒着の温床」という見方さえある。そもそも、戦後の発展を支えたのは「官民一体」の体制であり、これを変革することは一朝一夕には出来ない。経団連が日本丸を新たな方向に前進させる上では一般市民の賛同が不可欠であり、そのためには広報活動を格段に強化する必要がある。

    3. NTT移動通信網 大星社長
    4. 今回の選挙における低投票率は、政治に対する期待の希薄さを示している。それだけに我々経済人の役割は高まっている。政治に過大の期待を持たず、自律的に日本の将来をリードしていく取り組みが必要である。規制緩和についても、我々が自助努力により自由競争市場を創出し、規制を不要にしていくことが重要である。

    5. 日本光学工業協会 荘会長
    6. 経済活性化に向けて行革・規制緩和は急務であり、国を挙げて推進すべきである。このままでは高齢化、空洞化が進み、日本は衰退に向かいかねない。すでに議論は出そろい、残りは実行であるとの指摘もある。経団連には、実効性ある改革の実現に向けて、積極的に活動を進めてもらいたい。

    7. 興銀リース 岡部社長
    8. 日本は以前よりアセアン諸国と緊密な協力関係を築いてきた。しかし、これら諸国の経済的自立により、欧米・NIEs諸国との関係も深まっている。わが国はアセアン諸国への理解を一層深め、相手側のニーズに合致した協力を進めていく必要がある。
      中国については、経済協力の拡充が必要不可欠であるが、民間ベースの協力については、市場経済への移行期において、法制面の不備等により、対価の未払いのまま放置されている案件等が多数存在している。今後、民間協力を推進する上で、既存案件の処理に見通しをつけることが重要である。


くりっぷ No.44 目次日本語のホームページ