経団連くりっぷ No.44 (1996年11月28日)

今後の日米協力を考える部会(部会長 上原 隆氏)/11月5日〜6日

集中討議合宿で米国の経済人、政府関係者と日米協力を語り合う


アメリカ委員会の「今後の日米協力を考える部会」では、上原部会長以下22名が米国側19名の参加者(W.ビーグルス会頭をはじめとする米国商工会議所のメンバー、グリーンウッド公使ほか大使館関係者、R.モース麗澤大学教授)と経団連ゲストハウスで集中討議合宿を行ない、(1)日米関係の現状と今後の見通し、(2)日米中関係を中心に意見を交換した。
日米双方から出た主な多数意見は以下の通りである。

  1. 日米関係の現状と今後の見通し
    1. 企業レベルでの交流の拡大をはじめ、日米の相互依存関係・補完関係が深化している。
    2. 日米関係の現状は良好であり、今後の展望も中長期的には楽観視できる。短期的には、積み残しの経済問題が政治問題化しないよう、半導体・自動車交渉での実績を踏まえ、経済界も大きな役割を果たす必要がある(ただし一方で、日米双方で相手を矮小化する傾向があるとして、日米関係は悪い方向に向かっているという意見もあった。その具体的な現象として、親米・親日世代の後退、米国におけるリビジョニストの台頭、日本でのアジア指向の風潮などが指摘された)。
    3. 日米関係のカギは安全保障である(沖縄の米軍基地問題に対する日本国民の考えをよく把握することや、防衛論議を日本でももっとさかんに行なうべきであるなどの指摘あり)。
    4. 貿易・投資、知的所有権等グローバルなルールづくりの点で、日米の価値観、利害、方向性は一致しているので、WTO、APEC、OECDのMAI交渉などを通じて、両国は一層協力を強化すべきである。
    5. 日米関係の一層の拡大を図る目的で、人的交流、交互信頼、草の根交流を強化しなければならない。
    6. 米国に比べて、日本はまだサービス化、規制緩和、経済改革などが進んでおらず、両国は同じ土俵に上がっていない。このままでは米国の関心が日本から中国に移ってしまう恐れがある。

  2. 日米中関係
    1. 現在、米国は潜在的な市場、世界のルールメーキングの相手、安全保障上の脅威として、中国に強い関心を抱いている。
    2. 中国を封じ込めるより、安全保障や環境等の観点から、WTO加盟をはじめとして、国際社会に取り込むよう努めるべきである。
    3. 日米中3国の協力は重要であるが容易ではない(環境面での協力に可能性を見出す意見もあった。また、日本の対中投資について、海外資産の安全性、過去の侵略の事実など、経済合理性以外のネガティブ要素の存在を懸念する声もあった)。


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