経団連くりっぷ No.44 (1996年11月28日)

情報通信委員会(委員長 藤井義弘氏)/11月12日

通信市場の発展のために、競争促進策が重要
−クルックシャンク英国電気通信庁長官より聞く


情報通信委員会では、今般、英国の電気通信競争政策を担当する電気通信庁(OFTEL)のクルックシャンク長官を招き、英国通信市場における競争の現状と課題等について説明を聞いた。クルックシャンク長官は、「通信市場の発展のためには、適切な接続ルール作りなどの競争促進策が重要である」と述べた。
以下が長官の発言概要である。

クルックシャンク長官

  1. 日本の通信市場の発展のためには、インフラ、サービス両面での競争を促すことが非常に重要である。その意味で、日本の郵政省が、今般、相互接続の推進や外資規制の原則撤廃などの競争促進策を打ち出したことを高く評価している。これにより、日本の通信市場改革の焦点が、NTT問題から競争促進策に移っていくのは喜ばしいことである。接続ルール策定の際は、ドミナント事業者であるNTTと新規参入事業者との間で非対称なルールにする必要がある。また、接続料金の算定方法については、長期増分費用方式を導入する必要がある。

  2. OFTELは、通信事業者の国際的な提携の進展の現状に鑑み、今後は、英国内通信市場の構造問題への介入よりも、国際的な動向に留意した政策運営をしていくことが重要と考えている。BT(ブリティッシュ・テレコム)はすでに海外で活躍しているが、今般のMCI(米国大手長距離通信事業者)買収により、米国通信市場においても主要なプレイヤーとなっていこう。日本の郵政省についても、同様に、国際的な視野を持った政策運営が必要と言えよう。

  3. OFTELは、電気通信分野の競争促進のためには非常に強い権限を持つ、政府から独立した機関である。また、OFTELの職員は、官庁からの出向者であっても、出身官庁の意向に左右されることなくOFTELの仕事を遂行しなければならない義務が課せられている。OFTELとFCC(米国連邦通信委員会/米国の通信規制当局)とでは、持っている権限の大きさに違いがある。OFTELが通信市場の競争促進のための施策に関し、すべての権限を持っているのに対し、米国ではFCCの他に各州の公益事業委員会も大きな役割を果たしており、FCCと公益事業委員会との間で意見が食い違うこともある。米国では、8月、FCCが取りまとめた接続ルールが、公益事業委員会からのクレームにより、執行されないままになっている。


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