経団連くりっぷ No.44 (1996年11月28日)
地方振興部会(部会長 金谷邦男氏)/11月8日
新しい全国総合開発計画の策定につき国土庁幹部と懇談
政府の国土審議会では、現在、2010年を目標年次とする「新しい全国総合開発計画」の策定作業を進めているが、来春の閣議決定を控え、年内に同審議会計画部会における中間報告を発表する予定である。
国土・住宅政策委員会の地方振興部会では、その中間報告を前に、国土庁の川上五郎長官官房審議官を招き、全総計画策定の作業状況につき説明を受けるとともに、経済界の考え方を伝えた。
金谷部会長
川上審議官説明要旨
新しい全総計画の意義 わが国は今日、歴史の大転換期にある。国主導の開発から地域自ら選択し責任を持つ地域づくりへ、また太平洋ベルト地帯中心の国土から多軸型の国土への転換が求められている。しかし、これらの転換には時間がかかる。新しい全総計画は、2010年までに地域の自立の条件を整え、地域間競争を可能としようとする計画として策定したい。
小委員会での検討状況 計画部会では5つの小委員会で検討を進めている。
「文化と生活様式小委員会」では、美しい国土、文化を受容する国土をつくる方策や観光のあり方などを検討している。
「人と自然小委員会」では、国土管理の視点から流域圏という考え方を打ち出している。また農地、森林の公益的機能についても検討を進めている。
「街づくり小委員会」においては、中枢拠点都市圏づくりのあり方を検討し、都市の人口規模ごとに、各々備えるべきインフラを整理している。
「地域経済小委員会」では、各地域の産業のあり方、特に知的資本の拡充、外資系企業誘致の方策などについて議論している。
「基盤づくり小委員会」では、地域間の機会均等を目指し、長期的に地域にグローバルゲート機能を持たせる方向性を検討している。また、情報通信基盤においても地方都市への積極的な投資により料金格差などが出ないような仕組みを考えたい。
今後の検討課題 残された課題のうち重要なものは、
計画実現後の国土をイメージしやすい指標等の提示、
財政再建を進めるなかでの公共投資のあり方、
首都機能移転の位置づけ、
苫小牧東部、むつ小川原など大規模工業開発の方向や大都市圏の臨海部の再編成、
工業再配置促進法などの制度的枠組みの整理、
安全保障問題を抱える沖縄振興のあり方、
などである。これらは、おそらく中間報告の中に盛り込めないだろうが、最終答申やその後の施策の具体化の中で実現させていきたい。
全総計画に対する各経済団体の主張
経団連(金谷邦男地方振興部会長) 国土づくりの主役は地域であり、その前提となるインフラの整備は急務である。
また、1969年の新全総以来、全総計画に位置づけられてきた苫小牧東部、むつ小川原の大規模工業基地の再活性化に向け、思い切った施策を打ち出すべきである。
北海道経済連合会(中田一男常任理事) 北海道新幹線等高速交通体系の整備などによる北東国土軸、日本海国土軸の形成、が必要である。北海道は、クラスター的産業育成など、本州の後追いでない地域自立策を展開している。なお、苫小牧東部地区は、首都機能の受入先としても適している。
東北経済連合会(釘谷勇一企画部長) 産業の創造地域を目指し、東北インテリジェント・コスモス構想、東北ベンチャーランド運動等に努力している。国の研究機関等の立地を求めたい。また、新幹線など、積み残しとなっている交通基盤整備や中山間地対策も重要な課題である。
中部経済連合会(安木正一常務理事) 計画には新しい国土軸・地域連携軸の形成と太平洋ベルト地帯の再生について、具体策を書き込むべきである。また東京一極集中の是正、首都機能の移転、地域の個性化等を踏まえた計画とする必要がある。地域は広域的な地域づくりを目指したい。
北陸経済連合会(藤谷忠安専務理事) 環日本海交流の拠点として中枢都市圏の整備を図るとともに、日本海国土軸を形成する観点から、北陸新幹線の整備、富山伏木港の国際ハブ港湾化、能登空港の建設、若狭湾の電源地域振興などを推進すべきである。
中国経済連合会(高橋辰弥常務理事) 三海二山交流圏の形成に向け、ネットワーク型地域構造の形成、都市圏の連携・補完による地域連携軸と国土軸の形成、世界に開かれた中四国経済文化交流圏の形成を図っている。全総計画はこうした構想の後ろ楯となるべきである。
四国経済連合会(前川雅一専務理事) 太平洋新国土軸と地域連携軸の形成、並びにこれを裏付ける高速交通基盤、高度情報通信基盤の整備が重要である。また経済的な面のみならず、歴史文化道の形成により、地域文化圏をつくり、21世紀に文化遺産を残していくことも重要である。
九州・山口経済連合会(小林秋弘常務理事) 沿線人口の大きさからしても九州新幹線の整備は急務である。また九州の地理的条件を活かし、国際ハブ空港の建設など、アジアの時代の拠点としての整備も必要である。九州に若い人材が定着できるような生活インフラ整備も重要な課題である。
懇談
川上審議官:
財政事情は厳しく、具体的な社会基盤整備を盛り込めるか難しい。しかし、長期的な構想は書き込みたい。
経団連側:
財政が厳しくとも、外資規制の緩和などを地域指定で思い切って進めれば、地域の振興は可能である。規制緩和による地域の活性化を検討すべきである。
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