経団連くりっぷ No.44 (1996年11月28日)

IEAエネルギー環境課長との懇談会(座長 加納地球環境部会長)/11月8日

ソールズベリー課長は「炭素税は非現実的」と批判


来年12月に京都で開催される気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)では、2000年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みが決定される予定であり、加盟各国、国際機関等で検討が進んでいる。そこで、IEA(国際エネルギー機関)のソールズベリーエネルギー環境課長の来日を機に、同課長より、COP3に向けたIEAの対応等について説明を聞くとともに、意見交換を行なった。

  1. ソールズベリー課長説明要旨
  2. 来年12月に開催されるCOP3を成功させるには、現実的でコスト効果の高い具体策を議定書に盛り込むことが必要である。そのため、
    1. 産業界にも積極的な参加を促すこと、
    2. エネルギー業界はインフラ面の制約から硬直性を有しており、急激な構造変化を行なうことは難しいことから、柔軟性のある方策とすること、
    3. 技術開発や自主的取り組みを重視すること
    等が重要である。
    IEAは、気候変動枠組条約に対し、エネルギーの側面から意見を反映させるため、現在意見書をとりまとめている。意見書には、エネルギー業界の硬直性や各国のおかれた状況の違いに十分配慮するとともに、市場に則した政策とすべきこと、技術開発や自主的取り組みが重要であること、さらには、将来的に発展途上国の参加が不可欠であること等を盛り込む予定である。
    技術開発や自主的取り組みなどは産業界自ら対応可能なものであり、産業界の自発的な提案を期待したい。

  3. 懇談
  4. 問:
    炭素税についてどう考えるか。
    答:
    炭素税や排出権売買制度は理論的には最適な解決策かもしれないが、理論はあくまで理論であり、これまでの経験からみて、実際にうまくいくとは思えない。事実、1992年のリオ・サミット以降、地球温暖化対策を目的に炭素税を新たに導入した国はない。

    問:
    温室効果ガス削減目標は法的拘束力を有しない基準とすべきと考えるが、どうか。
    答:
    エネルギー業界が持つ硬直性に配慮し、2020〜2030年を見据えた長期的な目標を導入すべきである。具体的には、法的拘束力を持つ長期目標と、拘束力を持たない短期目標を導入するなど、温室効果ガス削減目標は2本立てにすべきである。

    問:
    地球規模で温室効果ガスの削減を目指す共同実施活動(AIJ)をどう見るか。
    答:
    現在、AIJはパイロット段階であり、温室効果ガスの削減・吸収量がクレジットされないことから、計画の数も少なく、内容的に優れたものもない。IEAとしては、発展途上国の理解を促すため、シミュレーション結果を提示するなど、積極的な推進活動を行なっていきたい。


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