経団連くりっぷ No.44 (1996年11月28日)

流通委員会企画部会(部会長 丹羽宇一郎氏)/11月8日

ネットワーク社会とエレクトロニック・コマース


流通委員会企画部会では、規制緩和と並んでエレクトロニック・コマース(EC)の普及・推進のために必要な環境整備について検討していくこととしている。その検討の皮切りとして、慶応義塾大学大学院経営管理研究科の國領二郎助教授より、コンピュータネットワークが流通構造、産業構造に与える影響について聞いた。以下は、その概要である。

  1. 國領助教授説明要旨
  2. 世界的に、ここ1年余りでオープンネットワークが急速に拡大してきた。ネットワーク化の進展により既存のさまざまな制約条件が外れ、今までなかったようなモノ作りが始まりつつある。

    1. オープン型ビジネス
    2. 特定メンバーとの間の戦略提携であっても、それを閉鎖的なネットワークで行なうことと、オープンネットワークを基本インフラとすることには、大きな違いがある。オープンネットワーク上では、一つの取引主体が、それぞれ違う目的ごとに複数のグループに属すること(複属性)が出来る。これにより、企業は自らの持つ得意な要素技術を最大限まで伸ばし、例えば、製品ごとにさまざまな企業と戦略提携を結ぶオープン型ビジネスが可能になる。コンピュータ産業では、このような戦略提携がすでに当たり前となってきている。

    3. バーチャル・コーポレーション
    4. また、オープンネットワークによって、組織の壁を超えたビジネス・プロセス・リエンジニアリングが可能になり、顧客のニーズに適った商品を、より短い時間と、より少ないコストで供給するためのシステムづくりが始まっている。これにより、あたかも一つの会社(バーチャル・コーポレーション)であるかのように、柔軟に顧客のニーズに対応することができる。

    5. 電子市場
    6. 消費者と企業の間、そして企業間を取り持つ巨大な流通空間としての電子市場の広がりは、コスト構造的な境界線を崩し、商圏を変えるインパクトを持つものである。しかし、実際に電子市場が発展していくためには、さまざまな課題を解決しなければならない。例えば、電子市場における商業取引ルールの確立、安全な取引のための信用提供の制度などである。現在、ルールやインフラ作りが世界中で急がれているが、この動きに、日本は大分遅れをとっている。

  3. 質疑応答
  4. 問:
    欧米で、ECは、現実にどこまで進展しているのか。
    答:
    ソフトウェアやコンテンツに関して電子市場での取引が活発化している。また企業の基幹情報システムを丸ごとアウトソーシングで受ける動きがあり、もしこれが欧米企業主導により、アジア諸国で本格化すれば、生産分業体制を共通基盤の上で機動的に構築することが可能になる。


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