経団連くりっぷ No.45 (1996年12月12日)

なびげーたー

経済協力・開発の実を挙げる人材育成

国際本部副本部長 江部 進


わが国民間企業の知識・経験を人材の派遣を通じて移転し、発展途上国の民間活力の活性化に資する現地の人材を育てることが重要である。

マニラで開催のAPEC閣僚会議および非公式首脳会議で、貿易・投資の自由化・円滑化を具体的に進めるマニラ計画と併せ、経済協力・開発強化の特別宣言が採択され、経済・技術協力の重要性が再確認された。人材育成、資本市場・産業インフラの整備、中小企業の育成などがその内容である。APECの参加国には発展途上国も多く、APECの安定した発展のために経済協力と開発の強化が求められるのは、当然のことと思われる。経済協力や開発の実を挙げる上で重要な要素は、人材の育成であろう。それも技能者から技術者、管理者、経営者と幅広く育てることが求められる。これはAPEC参加の途上国に限られるものではなく、発展段階により育成すべき人材の重点は異なろうが、途上国共通の課題であり、わが国も協力を期待されている。

民間の経験と活力を重視した経済協力・開発戦略が潮流となっている今日、わが国政府と民間部門が連携を一層密にし、途上国の民間活力の活性化を支援していくことが重要である。人材の育成もその例外ではない。先の当会政策提言「官民連携による途上国への知的支援の推進を求める」は、特に経営と管理の分野で企業の人材を途上国に派遣し、途上国の民間活力の活性化に資するよう政府の現行専門家派遣制度の改善・弾力的運営および「民間企業人材派遣プログラム」の策定を要望したものである。実現すれば、企業の知識・経験の移転を通じた現地の人材育成に一層貢献でき、また、メコン河流域開発のような複数の国に跨がる広域プロジェクトについて、インフラ整備等のハード面での支援と人材育成等のソフト面での支援の両方を念頭に置いた総合的開発計画を官民協力して立案・形成し、実施できる途が拓かれよう。経団連では、去る7月に訪メコン河流域開発協力ミッションを派遣、関係国のニーズを探っている。

わが国企業の知識・経験を途上国に伝播する経団連の活動をもう一つ紹介したい。最近実施に入った世銀グループとの人事交流である。ポイントは世銀グループが希望する分野の専門家を会員各社から派遣願い、一方世銀グループが派遣する専門家を会員各社に受け入れていただき、その知識・経験を吸収してもらうことである。受入れに伴う経費は基本的には各々受入側負担となっている。今回世銀グループへは環境、配電、産業汚染・汚染規制技術の3分野の専門家を派遣、一方同グループからはプロジェクト・ファイナンス、コーポレート・プランニング、投資バンカーの3分野の専門家を受け入れた。世銀グループへの専門家派遣は途上国の人材育成に繋がっていく活動である。


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