経団連くりっぷ No.45 (1996年12月12日)

シラク・フランス大統領との懇談会(座長 豊田会長)/11月19日

より強力で密度の高い対アジア関係の構築を


国賓として来日中のシラク・フランス大統領を迎えて、懇談会を開催した。大統領は、フランス経済は良好な条件を備えているが、失業の克服のために財政再建、構造改革に取り組む決意を示した。また欧州統合の要としての立場から、通貨統合への強い意思を表明した。さらに日本をはじめとするアジア諸国との関係強化を重視し、日本との経済関係の拡大を期待する旨述べた。以下はその概要である。

シラク大統領

  1. 財政再建、構造改革への取り組み
  2. フランスは、国内総生産で世界第4位であり、低インフレ、安定した通貨など経済成長の要件を備えている。フランス企業が世界中で成功する一方、門戸開放政策をとり、外国投資の誘致にも成功している。 しかし高い失業率を克服するために、さらなる経済成長を促し雇用を創出すべく、公共財政の再建、構造改革に取り組んでおり、その成果がすでに表れはじめている。世論の理解が完全に得られているわけではないが、国家のための施策は、時に政治的対価を強いられるものである。日本も経団連の支持を得て規制緩和に取り組んでいる。両国のたどる道は努力を要するが、長期的に経済競争力を保証するものである。

  3. 繁栄と雇用と成長の欧州
  4. フランスはドイツとともに欧州経済・通貨統合の要である。ユーロは世界の強力な通貨の一つとなり、加盟国の経済発展を促すであろう。経済成長が停滞する中、改革が進まず財政赤字、公的債務が増加する悪循環を断ち切るのは困難だが、各国とも予定通りに通貨統合を進めるべく努力している。現下の課題は、99年1月に通貨統合に参加する通貨とその他の通貨との関係の調整である。
    繁栄と雇用と成長の欧州を建設するためには、一方的措置や、二国間の解決を排除し、多国間のシステムを強化する必要がある。また貿易の拡大に伴い、安定した国際金融制度が重要になる。

  5. 日仏経済関係拡大への期待
  6. 日本をはじめアジア諸国との間により強力で密度の高い関係を構築することが私の野心である。日仏貿易は両国が世界経済に占める役割に比べて不十分であり、より多くのフランス企業の日本進出を望む。フランス企業にとって「日本は可能である」(Le Japon, c'est possible)と同時に、必要でもある。両国企業の相互理解を深めるため、97年に「フランスにおける日本年」を、98年に「日本におけるフランス年」を開催する。


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