経団連くりっぷ No.45 (1996年12月12日)

行政情報公開に関する打合せ会(司会 飯田行政改革推進委員長代行)/11月21日

「情報公開法要綱案」について聞く


政府の行政改革委員会では、昨年3月より情報公開部会において、行政機関の保有する情報を公開するための法律の制定に向けて検討を進め、11月1日、部会最終報告「情報公開法要綱案」を取りまとめた。経団連は、昨年12月今年6月に、行政機関の保有する企業秘密の保護を中心に意見を提出しており、標記会合において、同部会の塩野宏部会長代理から本報告について説明を聞いた。行政改革委員会は、12月に本報告を踏まえて、意見を総理に提出する。政府はこの意見を尊重して、行政情報公開法案の作成作業に入る予定である。


飯田委員長代行

  1. 塩野部会長代理説明要旨
    1. 情報公開法の目的
    2. 法の目的は政府活動の公開性(openness)の向上と、説明責任(accountability)の確立である。行政機関は、情報を提供するとともに、何に基づいて国政に関する決定を行なったかを明確にせねばならない。

    3. 開示請求権者
    4. すべての人が行政文書の開示を請求することができることとした。

    5. 開示請求の対象となる行政文書
    6. 対象となる文書は、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、行政機関が保有しているものである。職員個人用のメモ等は対象外である。

    7. 開示される行政文書の範囲
    8. 行政情報を、個人に関する情報、法人等に関する情報等に分けた上で、それぞれについて定性的に不開示情報の範囲を定めた。
      1. 個人に関する情報
        特定個人を識別可能な情報を不開示情報とした。ただし、慣行として公にされている情報等は開示される。
      2. 法人等に関する情報
        (1)競争上の地位、財産権その他正当な利益を害するおそれがある情報、(2)行政機関から要請を受け、公にしないとの約束の下、任意に提供された情報を不開示情報とした。
        後者は、特にその約束が「状況に照らし合理的であると認められる」ものに限定した。これは、約束の存在だけを理由に不開示とすると、情報隠しにつながるのではないかとの意見に配慮したものである。
      3. 公益上の理由による裁量的開示
        ただし、これらの個人情報、法人等の情報も、人の生命、身体、健康等の保護等のために必要な場合は開示される。さらに、行政の説明責任を全うするため、公益上必要な場合は、不開示情報も開示される。
      4. 行政文書の存否に関する情報
        また、有無が分かるだけで利益が侵害される種類の情報については、情報の存否を明らかにしないことができる。

    9. 開示請求と処理の手続
    10. 行政機関が、法人等第三者に関する情報を開示しようとする場合、当該法人等は、意見を述べる機会を得、また開示決定の取り消しの申立てをできる等、保護の規定が設けられている。

    11. 不服申立て
    12. 開示・不開示の決定に対する不服については、裁判所の判断だけでなく、行政内部でも素早い対応が求められる。開示・不開示を判断するのは当該情報を有する行政機関であるが、判断の適正さを確保するため、第三者機関として不服審査会を設けた。
      行政機関は、不服審査会の意見に拘束されないが、当然に意見を尊重するものと考えられる。

    13. 特殊法人の情報公開
    14. 情報公開法の対象は行政機関であり、特殊法人を一律同様に対象とすることは適切ではない。しかし、部会としても、各法人の性格や業務内容に応じた措置を講ずるよう強く要請している。

    15. 情報公開法の意義
    16. 情報公開法は、行政手続法(94年10月施行)に続いて、日本の行政スタイルの変換を迫るものである。いったん開示された行政情報は全国に広がるため、この制度は、わが国の合意形成のあり方までも変える可能性がある。また、官庁の文書管理のあり方にも革命的な変化をもたらすであろう。

  2. 質 疑
  3. 経団連側:
    (1)不開示の期限を定め、それ以降は開示するという考え方はないのか。
    (2)法に違反した場合罰則はないのか。
    塩野部会長代理:
    (1)の考え方では、期限までは不開示ということになりかねない。また期限が来ても開示できない情報もある。
    開示・不開示の判断は、開示請求の都度行うべきである。
    (2)は、行政側が本来開示すべき情報を隠した場合に問題となるが、情報公開法に罰則を設けることは考えていない。

    経団連側:
    行政による情報のリークについてはどう考えるか。
    塩野部会長代理:
    リークは本来公務員の秘密保守義務の問題であり、情報公開法とは無関係である。

    経団連側:
    法施行までに企業が任意に提供した情報は、黙示的に不開示を約束したものと考えて良いか。
    塩野部会長代理:
    法の施行以前に提供した情報についても公にしない旨の文書を交わせば、不開示の対象となりうる。すでに提供した文書については、約束があったかどうかは、事実認定の問題である。


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