経団連くりっぷ No.45 (1996年12月12日)

知的財産問題部会(部会長 丸島儀一氏)/11月18日

国際的な工業所有権問題に関する懇談会を開催


グローバル化に伴い、工業所有権分野においてもAPECなどの国際的な動向がますます重要になっている。そこで、産業技術委員会では知的財産問題部会(部会長:丸島儀一キャノン専務取締役)を開催し、特許庁の広沢総務部長、高倉海外協力室長より工業所有権問題をめぐる最近の国際的な動向について説明を聞いた。

  1. 工業所有権行政の国際的展開について
    −広沢総務部長説明要旨
    1. TRIPS(知的所有権の貿易に関連する側面に関する協定)交渉の妥結により、マルチ交渉の場としてWTO(世界貿易機関)とWIPO(世界知的所有権機関)が併存することになった。ボーダレス時代の到来によって、国ごとの制度では十分機能しなくなっており、国際的に機能する新しい仕組み作りが重要になってきている。

    2. 日米間では、先の日米フレームワーク協議の合意事項に基づき、日本側は「英語出願の許容」などをすべて履行している。他方、米国は大統領選挙などの国内事情もあり一部履行していない。また、米国の制度(先発明主義)をどう取り込んでいくかという課題も残っている。

    3. 特許庁はアジア諸国に対する関心を高めている。アジア諸国に対する海外からの特許出願件数は急増しており、審査が追いつかなくなっている。韓国、中国は人員を増やし、コンピュータ化も進めている。ASEANでは、国別の対応とともにASEAN全体で共同特許庁を作るなどの構想が提案され、日本もこれに協力している。

    4. さらに、国際的な知的財産権の侵害も大きな問題になってきており、特許庁としても関係省庁と協力しながら積極的に取り組んでいきたい。

  2. APECにおける知的財産権分野の検討状況について
    −高倉海外協力室長説明要旨
    1. 昨年のAPEC大阪会合で、知的財産権問題をはじめ15分野の重要課題が取り上げられた。知的財産権分野では、日本が担当になり、7つの共同行動
      1. 政策対話の深化、
      2. 各国の法制度の実態調査、
      3. 各国の知的財産権関係者のコンタクトポイントリストの作成、
      4. 域内における手続きの簡素化・標準化、
      5. 周知商標の保護、
      6. 知的財産権の侵害問題への対処、
      7. TRIPS協定の実施と技術協力
      を掲げ、その具体化に向けて活動している。

    2. また、昨年10月、ASEANサミットが開かれた際、共同特許庁・商標庁構想が提案された。まだ一部の国が反対しているが、とりあえず、来年12月までに特許庁はフィリピンが、商標庁はタイが担当して構想をまとめることになっている。


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