経団連くりっぷ No.46 (1996年12月26日)

第49回九州・山口経済懇談会/12月4日

グローバル時代における山口・九州・沖縄の魅力ある地域づくり


「活力あるグローバル国家の構築と魅力ある地域づくりを目指して」をテーマに、経団連、九州・山口経済連合会(九経連)共催の経済懇談会は、本年は福岡を離れ、19年ぶりに長崎で開催された。懇談会では、行革、規制緩和、税財政改革から地域の基盤整備まで、これからの時代における国・地方の課題について意見交換を行なった。当日は川合九経連会長はじめ山口・九州・沖縄の経済人約200名が出席、経団連側からは豊田会長、関本、末松、青井、伊藤、樋口、今井の各副会長が出席した。

  1. 九経連側発言
    1. 自立的な経済圏の構築
      川合辰雄 九経連会長(九州電力会長)
    2. 川合 九経連会長 九州地域の景気は、回復基調にあるものの、一進一退の状態が続いている。なかなか景気回復が実現しないのは、循環的な側面のみならず構造的な要因によるところが大きい。経済のグローバル化の一層の進展に対応して、中長期的な観点から、地域経済の構造転換を図るとともに自立的な経済圏を構築していくことが重要である。
      こうした観点から九経連では、
      1. 研究開発機能の強化や頭脳工場化を目指すテクノマザーランド九州の構築、
      2. アジアのゲートウェイとしての九州国際空港の実現、
      3. 九州地域の基礎的な社会資本の整備・充実
      に重点的に取り組んでいる。

    3. 行政改革と規制緩和の推進
      和智午郎 九経連副会長(西部ガス会長)
    4. 強い政治のリーダーシップのもと、新産業・新事業の展開の促進、企業のリストラに資する純粋持株会社の解禁などに早急に取り組む必要がある。政府は規制緩和の進捗状況を十分チェックの上、手順やタイムリミットを定めて取り組まねばならない。
      行政改革は、単なる省庁の数合わせではなく、公務員の削減や民営化の断行など実質的な行政のスリム化・効率化を図ることが重要である。先般、設置された行政改革会議では、国と地方の役割や機能分担のあり方等について、地方の側に立った議論を行なってほしい。

    5. 産業の空洞化と新産業創出への課題
      古賀義根 九経連副会長(東陶機器相談役)
    6. 九州地域では、
      1. 近年、全産業の開業率よりも廃業率が上回る、
      2. 域内企業の海外進出件数が95年までに759件に達し、特に90年代に入り中国への進出が目立つ、
      3. アジアとの結びつきが強まり、製品輸入の割合が過去最高水準の37.3%(95年)になる
      など産業の空洞化が懸念されている。

      産業の空洞化を回避するためには、新規事業の展開・新産業の創出が重要であり、

      1. テクノマザーランド九州の形成促進、
      2. 九州北部学術研究都市構想の実現、
      3. 航空宇宙産業・海洋関連産業などの育成、
      4. スリーピング・パテントの活用による技術開発の促進
      などに取り組む必要がある。

    7. 九州地域のインフラ整備
      石井幸孝 九経連副会長(九州旅客鉄道社長)
    8. 九州の高速交通基盤の整備状況は全国水準から見ると大きく立ち遅れており、特に九州新幹線は完成の目途すらたっていない。
      九州はアジア諸国と近接しているという地理的特性やこれまでの多彩な交流実績を活かして、環黄海交流圏など広域的な国際交流圏の形成に向けた最前線の役割を果たす必要がある。そのためには九州国際空港や中枢・中核国際港湾などの整備が必要である。また、沖縄は海域県としての特色を活かしたブロックとしての位置づけが必要である。
      財政難の中、効率的、重点的なインフラ整備を行なうべきである。

    9. 九州の国際化と観光産業
      松田 九経連副会長(ハウステンボス会長)
    10. 九州地域内企業の海外進出件数は759件、そのうち70%がアジア地域内への進出で、特に90年代以降中国への進出が目立っている。環黄海経済圏を形成する各国は、資金、技術、労働等の面で相互補完的な関係にあり、九州地域が重要な役割を果たすことができよう。アジアとの交流拡大を図る観点から、ハブ機能を持つ国際空港の整備は不可欠である。
      また、観光を文化、産業として捉える視点が重要である。政府でも国際観光振興のための施策を展開しはじめているが、日本への入国ビザの発給が厳しすぎるという問題などを解決する必要がある。

    11. 沖縄の国際交流の課題
      嶺井政治 九経連副会長(沖縄電力会長)
    12. 沖縄は中国などとの交易で栄えた「琉球王国時代」、生活苦から県人の北米、南米、ハワイ等への移住が盛んになった「廃藩置県時代」、交通ルールから通貨、距離尺度まで米国文化が導入された「米軍統治時代」、「本土復帰後の時代」の4つの時代を通じて海外との交流が盛んである。
      本土復帰後には沖縄のみに、フリートレードゾーン制度が認められたが、輸入割当枠による煩雑な手続があったり、法人税に軽減措置がないなど、不十分な点も多い。こうした制度を拡充し、県で策定した「国際都市形成構想」を実現していくことが今後の課題である。

  2. 経団連側発言
  3. 伊藤副会長が税財政改革、社会保障制度改革の実現を、今井副会長が行政改革、規制緩和を訴え、末松副会長はこれらの改革の土台となる人材育成システムの改革を訴えた。また青井副会長が科学技術創造立国づくりを、樋口副会長がニュービジネスの振興を呼びかけた。さらに関本副会長は九州のインフラ整備について「九州はひとつ」という結束力を示すことを求めた。また国際協力のあり方の変化、九州への期待などにつき、三好事務総長が説明した。最後に豊田会長が「研究開発機能の強化や交通インフラの整備が重要との共通認識ができた」と、締め括った。


くりっぷ No.46 目次日本語のホームページ