経団連くりっぷ No.46 (1996年12月26日)

第545回常任理事会/12月3日

「今後の政局運営について」自民党・加藤幹事長講演


第545回常任理事会では、自由民主党の加藤紘一幹事長を招き、「今後の政局運営について」伺うとともに、種々懇談した。

  1. 自民党・加藤幹事長講演概要
    1. 総選挙では自民党に風
    2. 今回の選挙で、自民党は大いに議席を伸ばしたが、その結果かえって政権が不安定になり、「めでたさも中くらいなり」という感じがある。
      事前には誰も気づかなかったが、今回の選挙では自民党に風が吹いたと思う。関東以北では民主党にも吹いた。
      自民党に風が吹いた第1の要因は、3年半におよぶ政治的に新しい試み(ベンチャー・ポリティックス)があまりうまくいかなかった結果、国民の間に安定的な政党政治への期待が高まったことである。
      第2は、責任ある発言への期待である。自民党が消費税5%と言い続けたことが、責任感を表すものとして評価を得たと思う。この方針を決める過程では、党内でも大激論がありギリギリの選択であったが、筋を通したことが良い結果につながった。
      第3に、これまで一緒に連立を組んだ社民党、さきがけに配慮しながら政治を進めたことが評価された。事前の世論調査でも、自民党の単独政権を望む意見は10%であったのに対し、自民党と他党の連立政権とする意見は50〜60%と高かった。また、選挙結果で見ても、選挙前は自社さを合わせて290議席であった。民主党の多くは社さから移った人である。そこで、自社さに民主党を加えた選挙結果を見ると、315議席に伸びており、国民の評価は決して低くない。

    3. 政治の安定に努力
    4. 社民党、さきがけ、民主党の3党の関係は今のところ安定していない。こうした中、政治の安定に向け、政策面での協定、個人間の信頼醸成に向けて努力していく。なお、いわゆる保々連合論があるが、これは現実的ではない。ただし、自民党の明るくオープンな政治に共鳴して、参加したいという方がいれば、個別的に受け入れていく。
      現在、自社さ合わせて256議席である。安定多数には265、どっしりした政治のためには300弱は必要であり、今後、民主党にも働きかけていきたい。

    5. 行政改革の3つの課題
    6. 厚生省や通産省等いろいろなスキャンダルが起きている。しかし、橋本総理は、嵐の中だからこそ、前向きに取り組み突破していかねばならないと言っている。
      具体的に取り組むべき事項は、行革ならびに景気回復・経済活性化である。行革の課題はいろいろあるが、私は次の3点であると考える。すなわち、(1)政治の復権、(2)日本型システムの変更、(3)経費節減である。

      1. 政治の復権
        戦後日本では、外交面では日米安保、経済面では先進国へのキャッチアップと外枠が明確に規定される中で、行政が国会運営まで仕切るようになり、政治が必ずしもリーダーシップを発揮してこなかった。政治というアマチュアゴルファーがシングルの腕前のキャディー、すなわち行政に教わっていたようなものである。ここにきてようやく、時々はノーキャディーでプレーしてみようというのが今日の政治の姿である。今後は政治が、行政にノーと言える知的強靭力を持たねばならない。

      2. 日本型システムの変更
        日本は歴史的に社会的な不平等の度合いが極めて低かった。自民党も戦後、社会党の政策を取り入れて所得再配分を進めた結果、極めて「大きな政府」が出来上がった。これを大改革することが必要となっている。橋本総理は当初、首都機能移転をキッカケにこれを進めようしていたが、それでは間に合わないということで、中央省庁を再編する中で1年で結論を出すこととした。
        なお、金融検査・監督機関の独立の問題が議論になっているが、すでに橋本総理は金融と財政とを切り離す方向を示している。これを日本版ビッグバンと一緒に具体的にどう進めるかが難しい所である。

      3. 経費節減
        行革によってすぐに経費が節減できる訳ではないが、現在取り組んでいる上級公務員の3割カットなどは、仕事の削減を通じて、中長期的に大きな効果があろう。

      4. 景気回復・経済活性化対策
        第1に短期的には補正予算の実行、第2に中期的には規制緩和を中心とする経済システムの変更に取り組む。第3に、これは大いに取り組んでいる所だが、科学技術・基礎研究に大きく資源を投入する。すでに建設公債を研究費に使用できる途を開いた。基礎研究の成果は、道路や橋と同様、後世に残る資産である。

    7. 日本を元気にしていく
    8. こうした取り組みによって国を元気にしていく。日本は黄昏だという意見もあるが、これを午前10時半頃に戻し、あと一仕事二仕事もできるという、自信を持った国にしていきたい。

  2. 懇談
  3. 経団連側:
    ODAについて中長期的にどう考えておられるか。
    加藤幹事長:
    ODAの推進は、わが国が国際的に果たさねばならない最も重要な役割の一つである。もちろん、有効に使われているか否かは一層厳しくチェックしていく必要がある。財政状況等、厳しい時期であるが、日本が尊敬を受ける国となるためにも、今が大切な時である。

    経団連側:
    尊敬される国になるためにも、WTOをはじめとする国際会議には、閣僚が積極的に出席してほしい。
    加藤幹事長:
    そうしたことを踏まえ、今回の組閣では、閣僚経験者を3人、政務次官に起用した。


くりっぷ No.46 目次日本語のホームページ