経団連くりっぷ No.46 (1996年12月26日)

日本ベトナム経済委員会(委員長 西尾 哲氏)/11月28日

ベトナムの改正外国投資法をめぐりフック計画投資省次官と懇談


ベトナムでは10月15日〜11月12日、国会(第9期第10回)が開かれ、88年4月に施行された外国投資法が改正された。また、一部閣僚の人事異動が行なわれ、当委員会のカウンターパートである計画投資省の大臣には、チャン・スアン・ザー前次官が就任した。当委員会では、外国投資法の改正に当たったヴォー・ホン・フック計画投資省次官、ヴー・フィ・ホアン同省外国投資局長ほかを招き、改正外国投資法の概要、新体制下の経済政策、投資環境改善に向けたベトナム政府の取り組みについて聞いた。

  1. フック次官説明概要
    1. 投資環境の改善
    2. 96年11月13日現在、対ベトナム投資は認可ベースで総額230億ドル(1580件)、このうち日本からの投資は27億ドル(168件)であり、国別ランキングでは第2位となっている。ベトナム憲法(25条)と外国投資法(新旧ともに21条)は、外国投資家の資本と財産を国有化することはないと規定している。設備投資用の機材、輸出品生産用の原材料には輸入税を課さず、インフラ関連事業についても税制上優遇することとしている。
      ベトナムはすでに30カ国と投資保護協定を、また18カ国と租税条約を結んでいる。MIGA(多国間投資保証機関)条約、「海外仲裁決定の承認と実施に関する1958年のニューヨーク協定」にも署名している。

    3. 改正外国投資法の概要
    4. 外国投資法の主な改正箇所は以下の通りである。
      1. 優遇措置により外国投資が奨励される優先分野と地域を明記した(3条)。これに伴い政府は、投資奨励リスト、制限リスト、禁止のリストを作成することとなった(同)。
      2. 外国企業は必要な外貨を自ら調達しなければならないが、インフラの建設、輸入代替のための必需品の国内生産、その他重要プロジェクトについては、事情の許す範囲内で外貨交換することができる(33条)。
      3. ベトナム投資により得た利益を現地通貨(ドン)で再投資することを認めた(7条)。
      4. BOT、BTO(Build-Transfer-Operate)、BT(Build-Transfer)の各方式の採用を明記した(60条)。
      5. 投資手続きを簡素化し、許認可審査期間を従来の3カ月以内から60日以内に短縮した(19条)。
      6. 合弁企業の取締役会決議において、出席者の全会一致を要する重要事項については、社長、筆頭副社長、主席監査役の任命・解任、定款変更、決算・事業計画の承認、設備投資のための借入れの4つに限定した。その他は過半数の決議によって決定できる(14条)。

      外国投資に関する国家管理については、以下の点が新たに規定された。

      1. 外国投資の一元管理を明文化し(55条)、その窓口としての計画投資省の権限を明示した(56条)。
      2. 計画投資省以外の省庁、政府機関および人民委員会は、外国投資に関する法律、政策、計画の作成に当たり、計画投資省と調整することとされた(57条)。
      3. 外国投資関連の法令違反に対する処罰とともに(63条)、当局の違法な決定や行為に対する不服申立てや訴訟についても規定した(64条)。

    5. 新体制下の経済政策
    6. 今年6月28日〜7月1日、第8回共産党大会が開催され、「第7期中央委員会の政治報告」、「1996年〜2000年の経済社会開発5カ年の方向と任務に関する報告」、「党規約」(補充・修正)が採択された。2000年に1人当たり実質GDPを90年の2倍にするには410億〜420億ドルの総投資が必要であり、そのうち海外からの直接投資は130億〜150億ドルを見込んでいる。
      2000年までの外国投資の重点分野としては、石油探査・開発、通信、港、空港、発電所、製鉄所、建設資材、化学品、肥料、機械、工作機械、輸出用品、重要地域の工業団地・ハイテクパークの造成、農林漁業分野における養殖と食品加工がある。さらに、民間企業によるインフラ整備を促進するため、北部と南部の発電所、高速道路、港、都市部の上水道などの各種プロジェクトについて優遇措置を講じる。

  2. 懇談
  3. 経団連側:
    成田または関西国際空港とハノイを結ぶ直行便を早く就航させてほしい。関空の枠も残り少ないので急ぐ必要がある。
    フック次官:
    ハノイ−関西−羽田をつなぐ方向で話し合いを進めている。双方にとって有益であれば、実現すると考える。

    経団連側:
    自動車や家電などについては、長期的な需要見通しと明確な産業政策を立てたうえで、外資の導入を進めるべきである。外国企業の合弁相手になる国営企業が合弁の申請をするまでにかなり時間がかかるので、政府からも円滑に進めるよう強力に行政指導をしてもらいたい。
    フック次官:
    産業分野ごとの長期的な需要見通しは公表している。短期的に需給ギャップが発生しても、中長期的には企業も採算が取れるようになろう。行政指導は、いまでも国営企業に対して行なっている。国営企業には中央省庁が管轄するものと、人民委員会が管轄するものの2種類がある。概して前者は規律があり経営も合理的だが、後者は規模も小さく合弁の手続きにも通じていない。パートナーを選定する際、このような点も考慮してほしい。

    経団連側:
    自動車ではすでに14社が認可され、全社は生き残れないと思う。自動車産業の育成にとって中古車輸入はマイナスである。部品の輸入枠があるために生産が制限されることがある。輸入枠を撤廃してほしい。
    フック次官:
    競争は厳しいと思うが、日本車の人気は高い。中古車輸入は関税によって抑制し、部品の輸入枠は廃止する方向で検討している。

    経団連側:
    計画投資省として、住民の立ち退きを伴うプロジェクトをどのようにフォローアップしているのか。
    フック次官:
    住民移転には時間がかかり、この問題には人民委員会の力が発揮される。計画投資省としても、プロジェクト認可後のフォローアップは必要だと考えている。

    経団連側:
    税制はどうなったか。
    ホアン局長:
    外国企業に対する基本税率は25%で変更はなく、優遇税率は20%、15%、10%の3段階である(38条)。なお、個人の所得税は、ベトナム国内で発生した所得だけが課税対象となる。


くりっぷ No.46 目次日本語のホームページ