経団連くりっぷ No.46 (1996年12月26日)
英国産業連盟との懇談会/12月2日
英国経済は政権の行方に係わりなく安定的な成長を継続
サー・コリン・マーシャル会長をはじめとする英国産業連盟の一行が、経団連を訪れ、日英両国の経済・政治の見通し、欧州統合の将来等について、豊田会長、久米副会長、樋口副会長らと懇談した。この中で、マーシャル会長は、来年に予定されている英国総選挙において労働党が政権を担うことになったとしても基本的経済政策に大きな変更は予想されず、英国経済は安定的な成長を続けるであろうとの見通しを示した。また、通貨統合への英国の参加については、英国ビジネスマンの過半数が肯定的である旨のアンケート結果を示した。
- 英国経済の現状について
英国経済は安定成長を続けており、英国産業連盟の分析では、96年のGDP成長率を2.0〜2.5%、97年を3.5%程度と見ている。インフレ率も低く、金利も英国ではもっとも低いレベルにある。また、失業者は200万人(7%台)に減少している。
こうした事から、中期的にはこれまで4年間の経済成長を継続し、今後も安定した成長が期待できると考える。
- 労働党の政策について
英国産業連盟は、労働党の政策に対して基本的には肯定的である。しかし、すべての政策に賛同しているわけではない。例えば、最低賃金制度の導入には反対である。同制度の導入による産業界の負担の増加は、経済成長を停滞させるばかりか、雇用の削減による失業率の上昇にもつながりかねない。また、EUの社会憲章の受け入れや、民営化された国営企業に対する差別的課税措置についても英国産業連盟は否定的である。
いずれにせよ、労働党は財政・税制に対する明確なビジョンを選挙前に国民に対して示す必要がある。
- 単一市場と通貨統合について
EUにおける英国の立場について否定的な報道が多くなされているが、英国は共同体のメンバーになってすでに23年がたっており、今後もEUの中心的なアクターであり続けたいと思っている。運輸や電気通信、共通農業政策の受け入れなどで国内諸制度の改革の必要はあるが、英国自身は、単一市場での継続的な活動を真に望んでいる。
単一通貨の導入にあたっては、英国はEUの中で唯一、通貨統合参加に対する決断を将来に留保することを認められている。商工会議所との協力で行なわれた英国のビジネスマンに対するアンケート調査で、圧倒的多数が単一市場を歓迎しており、単一通貨の導入に関しては、2対1の割合で賛同者が多いことがわかった。
しかし、単一通貨に対する英国産業連盟の見解表明は97年半ばまで留保したい。これに判断を下すには、産業界への影響についての情報が現時点では少なすぎると考える故である。
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