経団連くりっぷ No.46 (1996年12月26日)

OECD諮問委員会(委員長 行天豊雄氏)/12月4日

OECD内で高まる日本の役割


一時帰国した高橋OECD大使を迎え、最近のOECDの活動および今後の課題について説明を聞くとともに懇談した。大使は、OECDが直面する主要な課題として、新しい時代における役割の明確化、財政基盤の健全化、加盟国の拡大と多様化への対応を挙げた。また今後わが国として、経済界の意見も踏まえ、アジェンダ・セッティングを含めOECDに対し実質的な貢献を行なっていく考えを表明した。

  1. 横断的検討の強みを活かす
  2. OECDは、欧州の戦後復興のためのマーシャル・プランの受け皿であった欧州経済開発協力機構を前身とし、自由主義陣営の経済の相互調整を目的に1960年に発足した。89年のベルリンの壁崩壊以降、共産主義への対抗という本来の目的が消滅し、東欧諸国、ロシア等の旧共産圏諸国がこぞって加盟を希望している現在、OECDは自らの役割を問い直さざるを得ない状況にある。しかしながら、経済のグローバル化、急速な技術革新の結果、経済事象が複雑化している中で、横断的検討を強みとするOECDは、ますます実力を発揮すべきと考える。

  3. 活動の三本柱
  4. OECD憲章によれば、活動の柱はより高い経済成長の実現、途上国支援、自由かつ多角的な貿易体制の拡大の3つである。その活動の基本は、法的拘束力を持たないピア・プレッシャーによるマクロ経済政策の国際協調である。最近は特に雇用研究、環境と経済、貿易と競争等の分野に重点を置いている。

  5. OECDが直面する課題
  6. OECDの第1の課題は、新しい時代における役割の明確化である。ジョンストン事務総長は、従来の経済分析に加えて、社会的側面の活動の強化を考えているが、OECDは経済問題に専念すべきであるとの伝統的な考えも一方で根強い。
    第2の課題は財政問題である。95年以来、米国が議会の反対により分担金の一部を留保しているため、大変な財政難に陥っている。そこで、活動内容の大幅な見直しを行ない、財政基盤の健全化を急いでいる。
    第3の課題は、加盟国の拡大と多様化への対応である。93年まで長らく25カ国であった加盟国が現在29カ国にまで増え、今後一層の拡大が予想される。加盟国の多様化に伴い、例えば従来の全会一致の決定方式を見直すべきとの議論が出てきている。

  7. 求められるわが国経済界の積極的意見
  8. 米国がOECDへのコミットメントを明確にすることが、OECDが安定した発展を続ける鍵となる。わが国としては、資金面のみならずアジェンダ・セッティングなど実質面でも貢献していく所存である。その際、経済界からも積極的に意見をいただきたい。


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