経団連くりっぷ No.47 (1997年 1月 9日)

経団連第50回評議員会/来賓挨拶

ペルー日本大使公邸占拠事件の状況について

内閣総理大臣 橋本龍太郎


 経済構造改革、金融システム改革、財政構造改革に的を絞って、話をする予定にしていたが、昨日(96年12月18日)発生したペルーの日本大使公邸占拠事件の状況について、急遽報告させていただくことにする。

 本日お集まりいただいた評議員各位のなかには、社員の方々が人質となっている社も多数あり、非常にご心配のことと思う。 関係企業の方々は情報収集等にご努力されていることと思うが、現地の大使館員のほとんどが、人質になっているため、十分な情報がとれていないのが実情であろう。 今、池田外務大臣を乗せた特別機が、羽田を発ち、ペルーに向かったところである。この特別機には、外務省職員の他、通産省や現地の事情に精通しているJETRO職員も同行している。おそらく商用機を利用して各社から派遣した方々が現地に到着する頃には、相談を受け、情報を提供する態勢が整っているのではないかと思う。なんなりとご連絡をいただき、相談相手としていただきたい。

 非常に皮肉なことであるが、昨日はわが国が国連に加盟してちょうど40周年にあたり、当時の重光外務大臣が、初めて国連加盟の受諾演説を行なった日である。その記念式典が終わり、会場を出た直後に、ペルーの日本大使館にテロリスト進入、の一報を受けた。官邸にすぐ戻ったが、状況はますます膠着状態を深めている。この間フジモリ大統領に連絡を取りながら、あくまでも邦人を含めた人質の救出を最重要という位置づけにして対応してもらいたいと繰り返し依頼している。また、日本の大使公邸で発生した事件であり、各国の大使館員を人質に含んでいることを鑑み、関係各国に情報提供をし続けながら、この状況を見守っている。

 政府としては、私自身を本部長として対策本部を設置したが、最大限の努力を払うとともに、冷静に全力を挙げて対応していきたい。関係各企業においても、その苦悩は察するが、できるだけ冷静な対応をお願いする。

 また、テロリスト・グループに情報を与えないよう、報道機関の方々にも、できる限り冷静な対応をお願いし続けている。

 現地(ペルー)においても、国内においても、連絡体制を敷きながら、できる限りの努力をしていきたいと考えている。

 明年(97年)こそは、こうした問題の起こらないような平和の年にしたいという思いである。


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