経団連くりっぷ No.48 (1997年 1月23日)

新産業・新事業委員会企画部会報告書/12月26日

「日本型コーポレート・ベンチャーを目指して」


新産業・新事業委員会(委員長 大賀ソニ−会長)では、大企業の新規事業や独立ベンチャー企業の発展のための環境整備などに取り組んでいるが、昨年5月の定時総会において、豊田会長が、会員企業に対して「ベンチャー企業を1社以上立ち上げる」よう呼びかけたのを受け、企画部会(部会長 古見日興リサーチセンター社長)において、7月以来、各社の新規事業分野への進出の経験を基に議論を重ね、今般、主要14社におけるこれまでの成功例・失敗例や、今後の取り組みへの教訓を整理した標記報告書をとりまとめた。以下はそのポイントである。

  1. 新規事業開拓の失敗の要因
    1. アイデア先行、技術過信に陥り、ニーズとシーズが適切に結びつかない。
    2. 一般的な産業成長性にとらわれ、ミクロの市場ニーズへの対応が不十分である。
    3. 従来体制の延長での取り組みに止まっており、事業化に対する意欲と執念が不足している。
    4. 新規事業における顧客ニーズ等市場特性の認識が不十分である。
    5. 決断のタイミングが不適切である。

  2. 新規事業開拓に成功した要因
    1. 自社商品に関する市場の成長を確信できる。
    2. 自社ならではの魅力、利点を持つ。
    3. 社内の経営資源を有効に活用する。
    4. 新事業・市場特性に合った独立運用体制を導入する。
    5. 創造性を重んじる会社風土を醸成する。

  3. 新規事業創出のための教訓
    1. トップのリーダーシップの発揮、
    2. プロジェクトにチャレンジしやすい仕組みを社内に作ること、
    3. 新規事業におけるダイナミックで迅速な決断と行動、
    4. 柔軟性とチャレンジマインドのある会社風土を醸成すること、
    5. 権限と責任を思い切って委譲して社員の個性と創造性を尊重するとともに、会社がその活動を支援するコーポレート・ベンチャーを推進することが重要である。

  4. おわりに
    1. 今後、企業として、個性と創造性発揮のための社内規制の一層の緩和ならびにトップのリーダーシップの発揮により新事業を推進することが不可欠である。
    2. 同時に、政府規制の緩和や税制改革等の環境整備が必要であり、とくに
      1. 法人の実質租税負担の軽減と連結納税制度の導入、
      2. 純粋持株会社規制の緩和、
      3. ストックオプションのための自己株式取得規制の緩和、
      4. 労働者派遣事業の原則自由化、職業紹介事業の原則自由化、
      5. 迅速な子会社設立のための商法の見直し(商法上の現物出資規制の緩和、登記事務の迅速化など)、
      6. 情報通信、医療・福祉など成長が期待される分野における規制緩和(電気通信事業法における事業区分の見直し・料金規制の緩和・役務規制の緩和、営利法人による病院経営・介護支援センター等への参入の解禁、介護切符制度の解禁など)
      が急務である。


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