経団連くりっぷ No.49 (1997年 2月13日)

なびげーたー

創造的な人材育成の環境整備の促進を

社会本部長 池 誠


創造的な人材育成のための環境作りの一環として企業は採用のオープン化・多様化等の努力を重ねつつあり、経団連としてもこれを支援していきたい。

 経団連では、昨年3月に「創造的な人材の育成に向けて−求められる教育改革と企業の行動」という提言を公表した。そこでは21世紀に求められる人材は創造的な人材であると考えられるので、各企業に対し、学校名不問など開かれた多様な採用方法の推進、個人の意欲・能力を引き出す処遇制度の導入といった、学歴偏重を是正し、個人の能力と個性を評価をする環境作りのための「7つのアクション」を呼びかけた。また、教育界・行政・家庭に対しても、創造性の発揮の観点から、教育にかかわる規制緩和の推進等の教育改革を積極的に進めるよう「5つの提言」を行なった。さらにこれらの提言をフォローアップし、創造的な人材育成の環境整備に取り組むために創造的人材育成協議会(会長:末松さくら銀行会長)を発足させた。

 そして、同協議会では、中央教育審議会等教育関係審議会での意見発表や文部大臣を始めとする文部省幹部、教育関係者との意見交換を行なう一方、昨年10月には経団連の規制緩和要望の一環としてカリキュラム選択の弾力化等、創造的人材育成の見地から教育分野に関する規制緩和要望を取りまとめ、その推進方を働きかけている。

 また、各社の多様な採用方法や柔軟な処遇・評価制度への取り組み状況を促進するために、各企業の人事・総務部門の担当者とのフォーラムを開催し、今後の人材育成に関しての意見交換・経験交流を行なうとともに、取り組み状況に関して昨年12月に経団連会員企業約1000社に対してアンケート調査を行なった。

 現在、整理・分析中であるが、400社より回答があり、採用の際に重視する項目では、熱意・意欲(文系84.3%、理系71.5%)や創造性(文系37.4%、理系45.9%)をあげる企業が極めて多かった。一方、出身校を重視するとする企業はわずかであった(重視すると回答した企業−文系6.3%、理系4.9%)。また、文系の学生に対しては協調性や一般常識、学生時代に特に力を入れて取り組んだこと、理系の学生に対しては専門的知識や出身学部・学科を重視するとの回答を得た。採用方法ということでは、オープンエントリー制、学校名不問の採用、リクルーター制の廃止や通年採用、秋期採用などを導入する企業は確実に増加しており、各企業における採用のオープン化・多様化の流れが進んでいることが窺われる。さらに回答企業の約3割が昨年から採用にインターネット利用を開始し、中には国際的な採用活動に利用するなど、今後の採用方法の多様化が予測される。今後とも各社の積極的な取り組みを期待するとともに、われわれとしても創造的な人材育成の環境整備に向けて諸活動を行なっていきたい。


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