経団連くりっぷ No.49 (1997年 2月13日)

第34回四国地方経済懇談会/1月22日

広域的な行政の確立・基盤整備への取り組みと世界に開かれた四国の実現


経団連では四国経済連合会(四経連)と共催により、標記経済懇談会を松山市にて開催した。当日は、四国側からは山本四経連会長ら地元経済人約160名が、経団連からは豊田会長、久米・関本・末松・伊藤・今井・熊谷・北岡の各副会長が出席し、「構造改革元年−日本の進路を切り開く」を基本テーマに、構造改革の進め方、四国の果たすべき役割などについて活発な意見交換を行なった。

  1. 開会挨拶
    山本 博氏(四国経済連合会会長/四国電力会長)
  2. 山本 四経連会長 四国経済は依然として厳しい状況にある。
    四経連の昨年12月の調査では景気が「下降」ないし「底ばい」と答えた企業が全体の56%を占めている。景気を一日も早く本格的な回復軌道に乗せるため、経済界の自助努力に加え、弾力的な財政政策、規制緩和など構造改革の断行が必要である。
    構造改革を進める上で、新しい国土形成により地方の経済活力を高めることが不可欠である。四国においては、新しい全総計画の中に太平洋新国土軸を明確に位置づけ、それを支える高速交通・高度情報通信基盤を着実に整備することが必要である。

  3. 四経連側発言
    1. 規制緩和の推進と新産業の開拓・創造
      布川 隆美氏(四国経済連合会副会長/富士ファニチア会長)
    2. 21世紀に向けて、調和のとれた豊かな社会を構築するためには、規制緩和や新産業の開拓・創造が不可欠である。
      規制緩和は、「官」から「民」への権限委譲であり、画餅に帰すことのないよう、政治のリーダーシップを期待したい。
      一方、今後成長が大きく期待される知識集約型・研究開発型産業を中心に、強靭な産業構造を構築していくことが重要な課題となろう。

    3. 地方分権と広域行政の推進
      松山 紀由氏(四国経済連合会副会長/住友化学工業取締役)
    4. わが国の中央集権構造から生じたさまざまな弊害をなくすためには、地方分権を進め分権型システムへの転換を図る必要がある。地方分権推進委員会において、機関委任事務の廃止等が提言されたことは、高く評価できるが、地方分権の実をあげるには、地方の財源確保や意識改革、体制整備が必要である。四国では、市町村の広域的な連携強化や、市町村合併推進に向けた取り組みを進めていく。

    5. 高速交通・高度情報通信基盤の整備
      立田 敬二氏(四国経済連合会副会長/立田回漕店会長)
    6. 太平洋新国土軸や地域連携軸を支える高速交通・高度情報通信基盤の整備は重要な課題である。高速道路の供用率は全国平均で52%に対し、四国では32%に過ぎない。
      その整備や、高速鉄道の整備、通信料金の遠近格差是正を含む情報通信インフラの整備を促進すべきである。中央において「費用対効果」を重視し、地方への公共投資をためらう意見もあるが、交通インフラや情報インフラは地方の自立的発展にとって不可欠なものであり、長期的視点で考えるべきである。

    7. 広域交流圏の形成と歴史・文化道の整備
      伊東 弘敦氏(四国経済連合会副会長/四国旅客鉄道社長)
    8. 四経連ではかねてから四国、中国、近畿、九州が活発に交流する広域交流圏の形成を提唱している。こうした交流圏を形成するためには、東西の太平洋新国土軸の早期実現を図るとともに、本四3橋を活用して、太平洋から日本海へと結ぶ南北の地域連携軸の形成を進めることが不可欠である。
      地域の歴史や文化に容易に触れ、親しむ環境をつくりだそうという「歴史・文化道構想」では、広域的な観光ルートを地域連携軸さらには国土軸を介して全国に繋いでいきたい。

    9. 世界に直接開かれた四国の実現
      桝田 三郎氏(四国経済連合会副会長/伊予銀行相談役)
    10. 四国は先端的技術により世界的に大きなシェアを占める企業や海外に誇るべき遺産が少なくなく、国際化を推進しうるポテンシャルを有している。地域が新たな活路を切り開くためにも「世界に開かれた四国」を実現していくことが重要である。
      そのためには、海外との間を直接結ぶ交通・通信ネットワークの整備を進めることや、関西国際空港へのアクセスの整備、国際港湾の整備、松山・高知のFAZ(輸入促進地域)の充実が重要である。また高速貨物船テクノスーパーライナーの誘致も積極的に進めたい。

  4. 経団連側発言
  5. 伊藤副会長が「経済構造改革、財政構造改革、社会保障制度改革の実現を」、久米副会長が「税制改革に積極的に声をあげてほしい」と訴えた。また今井副会長が「行政改革を中央省庁再編、地方分権、規制緩和とともに推進すべきである」、末松副会長が「次の経済社会を担う創造的人材の育成が必要だ」と訴え、関本副会長は「広域的連携を進める交通インフラの充実は必要である」と強調した。熊谷副会長は「FAZ等を活用した地方の国際化の推進」を求め、北岡副会長は「WTO体制の強化、貿易・投資上の規制緩和の推進等が必要である」と指摘した。最後に豊田会長が「四国が地域づくりの主役になるという気概を感じた」と締めくくった。


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