経団連くりっぷ No.49 (1997年 2月13日)

ヨーロッパ地域委員会(委員長 若井恒雄氏)/1月20日

中・東欧へのゲート・ウエイとしてのオーストリアの役割


ヨーロッパ地域委員会では、さる1月19日から21日にかけ来日したオーストリアのフランライトナー経済大臣一行を招き、経済セミナーを開催し、二国間経済協力関係の強化策ならびに中・東欧へのゲート・ウエイとしてのオーストリアの役割等に関し意見交換を行なった。また、当日、セミナーに先立ち、豊田会長との懇談が行なわれた。
以下はフランライトナー大臣のセミナーでの発言内容である。

  1. オーストリア経済の現状について
  2. オーストリアの経済状況は良好である。96年のインフレ率は約2%、失業率は約4%であり、EU諸国では、ルクセンブルグに次いで良い数字である。これは政府のマクロ経済政策が功を奏した結果であり、10年ぶりに昨年12月に失業率が減少し、今後も減少方向にある。また、経済成長に関しては、1〜2%という低率で推移してきているが、オ経済は成熟段階にあると同時に、経済構造改革のプロセスにあるので当然このような成長率に止まっているのである。
    事実、オ国民の1人当たりの所得額は欧州で2番目に高く、所得の配分もきちんと行なわれており、「貧困」という言葉は存在しない。

  3. 対EU関係について
  4. オーストリアの経常収支の悪化等を指摘する向きもあるが、EU加盟国となった現在、ヨーロッパ単位での経常収支がむしろ重要になってくる。世界でも有数の単一市場であるEUに加盟したことにより、オーストリア経済は一層魅力を増してきている。また、EU加盟により、国内経済の規制緩和もスムーズに推進され、21世紀型の経済機構に生まれ変わりつつある。

  5. 欧州通貨統合とオーストリアの姿勢
  6. 統一通貨の加盟基準であるマーストリヒト基準を満たすための準備を進めており、99年1月の新通貨「ユーロ」加盟の第一陣に独・仏とともに加盟する予定である。具体的には財政赤字是正2カ年計画が推進され、基準条件を満たすことが可能になる。また、ポルトガルおよびアイルランドのように補助金をもらっている国とドイツやオーストリアのようにそれらの国に補助金を払っている国々とを同じ扱いをするのは間違っており、最終的にはこの点も考慮されることになる。
    単なる数値設定による加盟条件というよりは、政治上の配慮が最終的に下されることになるであろう。98年後半、オーストリアはEU議長国に就任することになっており、こういう意味でも有利に展開していくことになろう。

  7. 中・東欧へのゲート・ウエイ
  8. スロヴェニアからポーランドにかけての旧東欧諸国地域へのアクセスが可能となった現在、同地域での新たな市場ダイナミズムが期待できる。具体的には、ドニエプル川流域までの旧東欧地域に経済成長地帯が生まれることとなり、旧オーストリア・ハンガリー地域単位での経済復興も期待されている。
    以上のような状況を考慮し、是非、対オーストリア投資を検討してもらいたい。


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