経団連くりっぷ No.49 (1997年 2月13日)

金融制度委員会(委員長 樋口廣太郎氏)/1月17日

外為法改正が国内金融市場に与える影響
―榊原大蔵省国際金融局長と懇談


金融制度委員会では、榊原大蔵省国際金融局長より、外国為替管理制度の見直しの具体的内容やその影響について説明を聞くとともに、意見交換を行なった。懇談の要旨は以下の通りである。

  1. 榊原局長説明要旨
    1. 最近の株安は、政府の改革に取り組む姿勢とは別の、決算対策等を理由とした日本人による日本売りが主たる原因になっている。政府の改革への姿勢ははっきりしており、今回の外為法改正は改革の名に値するものである。これが金融ビッグバンを加速することは間違いない。

    2. 完全自由化を目的とした外為法改正により、企業や個人が自由に海外の企業や個人と資本取引、決済などを行なうことができるようになり、誰でも外為業務に自由に参入・退出することが可能になる。許可・届出にかわって事後報告が求められるが、簡素化のため報告も整理合理化し、一定期間の取引をまとめた報告も可能にしたい。

    3. 外為法が改正されれば、国内の有価証券取引税や株式手数料の見直しなどの改革を進めざるをえなくなるだろう。さもないと東京市場が空洞化することになる。例えば、日本の銀行預金などの利子には源泉徴収税が課されるが、海外の銀行に自由に預金できるようになれば、海外では源徴制度がないため、国内で源徴制度を維持することが難しくなる。また、国内の投資家が海外の証券会社と自由に取引できるようになれば、日本の株式手数料体系が適用されず、有価証券取引税も徴収できなくなる。

    4. 外為法改正は、本年4月か5月に国会に提出され、可決されれば98年4月1日に施行したい。主税局は、平成10年度の税制改正で、源泉徴収税や有価証券取引税を含めた金融税制全体を見直すと言っており、98年4月1日には外為法施行と同時に税制改正も行ないたい。

  2. 懇談
  3. 経団連側:
    イギリスのビッグバンはロンドン市場の活性化には効果があったが、英国の金融業の競争力向上に役立ったかは疑問がある。今回の外為法改正の影響はどうか。
    榊原局長:
    空洞化と金融業の競争力は、今回の外為法改正の一番重要な問題である。
    今後、東京の空洞化回避に官民挙げて真剣に取り組まなくてはならない。また、外為法改正によって新しいビジネス・チャンスが出てくるため、それに機敏に対応し、新しいビジネスを創っていくことが大切である。英国では、ビッグバンの結果イギリス資本の銀行が非常に少なくなったが、英国当局は「金融機関の資本構成にはまったく関心を持っていない。ビッグバンが英国の雇用、国民所得に寄与すればよい」との考え方を示している。


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